このレビューはネタバレを含みます
"Call me by your name"
見た者が、同じ感情を共有する魔法の言葉にもなりそうなほど、強く美しいシーン。
場所、季節、風、空気、音、会話、主人公たち
どれをとっても美しく、数日頭から離れない映画です。
自然の表現がとても良くて、夏の音、光、乾いた空気が淡い思い出のように描かれ、北イタリアの夏の世界観に引き込まれます。
BGMも素晴らしく、坂本龍一の曲は、かわいらしく、飛び跳ねるようなこころ、何か気持ちが変わっていくようです。
"甘酸っぱい"だけでは語りきれない切ないひと夏の恋。1983年という時代を考えるとよりセンチメンタルなものになります。
大学教授の父親が、毎夏学生を受け入れ、家族ぐるみで一緒に別荘で過ごす雰囲気ももう素敵なのですが、今年の学生は自信家でハンサムなオリヴァー。
最初は、そんなオリヴァーに反発していた17歳の少年エリオですが、一緒に過ごすうちに、父の補佐として信頼を得ているオリヴァーに対する嫉妬のような、好意のような、不思議な感情を持ち始めます。まさに近づいたり離れたり。
オリヴァーはエリオの感情を揺さぶる存在に…
ハンサムで高身長で知的で、ちょっと横柄で。
同じように知的ではありながらも、感情に振り回されているエリオからしたらとても大人に見えたのかもしれません。でもその瑞々しさと自信なさげな儚さが尊くもあり眩しい。
シャラメが持っている元々の魅力が、この役をより引き立てていて、所作ひとつひとつがとてもよい。
そして、この物語に欠かせないのが、聡明でとても理解のある深い愛を持った両親。彼らの紡ぐ言葉やエリオに伝えようとすることが素晴らしく、感動的です。こんな素敵な言葉をかけられる親、いるのだろうか…羨ましい。
ひたすら悲しく、苦しいだろう。
痛みを葬るな。
感じた喜びも忘れずに。
気だるく淫靡な夏の午後。
煌めく水面。
風を感じる草むらでのキス。
繰り返されるbecause I want you to know.
美しい景色とバカンスへの憧憬、センシティブでまっすぐな恋への渇望。エリオへの感情移入。いろんな感情がないまぜになり、苦しくなりながらも、それらが全て美しく、何度も思い出しまう不思議な作品。
