Masato

君の名前で僕を呼んでのMasatoのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.4
本当の主人公はお父さん

イタリアの避暑地、芸術作品のような顔立ちの美青年と、クリストファーリーヴのようなザ・アメリカンな男との恋を描くラブロマンス。

言葉では説明できない感情や映像を緻密に、静謐に描き出す。これこそ映画のような気がした。
どこをどう切り取っても絵画のような映像。特に2人の遠近感が素晴らしい。だけども、80年代らしいポップな雰囲気もある。

1980年代はまだLGBTに理解がなかった時代であり、同性を好きになることの葛藤が描かれる。事実、この頃は「同性愛」を病気と呼んでいた時代だ。でも、他の映画とは異なり、その葛藤を顕著に前面へと押し出さない。あくまでも自然的に描く。

この映画の主人公は、ティモシーシャラメ(エリオ)でもアーミーハマー(オリヴァー)でもなく、マイケルスタールバーグ(父親)だろう。ラストシーンにこの映画の真髄が隠されている。
LGBTはあくまでもテーマの添え物でしかない。本当は人生の普遍的なものがテーマ。それは、俗世の見えないルールに囚われずに、ただ自分の思うことをしていくことが一度きりの人生でどれだけ有意義なことかだ。そして、それを静かに見守る寛容性こそが今を生きる私たちに必要なのだと。
この作品は原作者の半自伝的な部分があるそうなので、おそらくこの映画の父親は、原作者(あるいは監督)自身であるのだろうなと感じた。原作者は自身の人生で後悔をするような経験をしたのだろう。だから、昔の若かった自分に「後悔をするような事はするな」と言いたかったんだろう。それがこの作品にこめられた最大のものだと私は思う。そう思うと、ただただ哀しい。

結果、表向きはラブロマンスだが、ひっくり返すと「人生と向き合う映画」だった。深い。ここまで映画は豹変するものなのかと感嘆。

ただし、この映画を男が見ると、ティモシーシャラメとアーミーハマーがかっこよすぎて嫉妬の嵐が巻き起こるので注意。ティモシーは中性的なので、日本では人気になりそうだ。

Call Me by Your Name 2の製作が決まったそうなので期待。
Masato

Masato