蒼井ことり

君の名前で僕を呼んでの蒼井ことりのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

君の名前で僕を呼んで

とは、どういう意味か?
恋人同士の合言葉?イタリアの習慣?

前半はとてもよかった。2人が結ばれてからは長い蛇足に感じた。
オリヴァーが帰国するのかと思ったら、
あれ?まだ帰らない?
あれ?まだいるの?
という感じで、2人の関係も一回限りでなく、ずるずるしたものになったような気がする。

全編、北イタリアの夏の濃い緑が美しい。
緑の中のテーブルでいただく食事、半熟卵から流れる黄色い黄身、干されたカラフルな衣類、とうとうと湧き流れる泉、輝く夏のひかり、木漏れ日。ヨーロッパの田舎の夏をありったけ満喫できる。
エリオとオリヴァーがサイクリングで向かう先、あるいはエリオとマルシアが歩くシーンなどで、時折出てくるヨーロッパの重厚で歴史ある建物も、ヨーロッパ好きにはたまらない。

2人は美しくて、ゲイムービーに見合った、あまりにも、あまりにもコテコテで典型的なルックス。
アーミー・ハマー(オリヴァー)は顔が整い過ぎたいわゆるハンサム顔で、個性や特徴がないので覚えられない顔。太ももの短パン姿が色気全開、男性ホルモンがムンムン。
萩尾望都の漫画から抜け出してきたような少年、ティモシー・シャラメ(エリオ)は逸材。ピアノが弾けて、華奢で、綺麗。この中性的な顔立ちや身体つき、儚さは10代特有で、いずれホルモンバランスで消えていくと思うから、フィルムに残せてよかったと思う(後で知ったが20代なのね)。良いか悪いかは別として、とにかくゲイムービーは、性描写の関係からか、被写体が美しくないと成り立たないと思う。
それにしても少し前まで、ヨーロッパ映画のティーンエイジャーって、肥満気味でぽっこりお腹だったりして、そこがおおらかでナチュラルで良かったけど、昨今はずいぶんスリムになったなぁ。折れそうに細いエリオ、マルシアはシックスパックが浮き出て締まったヘルシーな体。

年の差もあるし、エリオが童顔でヨーロッパの平均的な少年より幼く見えたので、オリヴァーがモロにロリコンに思えてしまう。
エリオがオリヴァーに憧れるのは何となくわかるんだけど。
大人の男が、こんな子供みたいな子に、こんなに惹かれるなんて、恋ってすごい。年の差があってもこんなに気持ちが通じ合うなんて、年齢なんて関係ないんだなぁ。

ピアノ曲や、80年代ポップスと思しき挿入歌の使い方がうまく、映像とあいまってすごく素敵。

パパの告白(自分は機会を失った…云々)は必要だったのか?
(恋愛において、人が相手に与えるのものが)30歳までにすり減ってしまう、というセリフにはハッとさせられた。イタリア人同士なのにパパとエリオはなぜ英語で会話してるの?聞かれたくない会話だったから?

LBGTもの、とくにゲイムービーは、孤独なイメージだ。でも本作は、これでもかと主人公の親が、いい意味で見守り役として介入してきて、どことなくアットホームだった。
前半は大した事件が起こったりしないし、セリフも平凡なようでいて、まったく飽きなくて、センスがいいんだなと思った。

エリオ、オリヴァーより、マルシアに惚れそうだった。
すごくいい子。頭も悪くない。
「ねぇ、わたし、あなたの彼女?」
勇気を出して会いに来て問うたのに、エリオは困った表情。
すごく傷ついたと思うのに、
「あなたのくれた本読んだ。
私怒ってない。
ずっと友達。」
だなんて…絶対いい女になるね。
蒼井ことり

蒼井ことり