〝純粋なココロを失っていると、誰かに純粋な行動を取られたとき想定外の衝撃にココロを奪われる…〟

グレダ（30歳過ぎた頃）は自身の欲求を満たす為に、作家を目指す若い青年カールに貢ぐ女。
アパートの家賃を払ったりスポーツカーを買ってあげたり、せがまれればボートだって小切手を切ってカールの要求に応える。

だからと言ってグレダが資産家でも大富豪でもなく、徐々に貢ぐ金と生活費に困っていく。
30歳を過ぎ金の繋がりとは言え若い男に求められる事は、彼女なりに生きる喜びを感じていたのだ。

お金の工面に悩んでいたグレダは、以前から好意を持たれていた中年男エイナールに近づく。
日々遊び惚け女好きのエイナールから、特別な契約を結ぶために…。

そして現れたのがグレダの姉の娘インガ（17歳）、グレダの姪の登場。
母の死によりグレダの家に住む事になったインガは、文学と歴史が大好きでいつも読書をしている生真面目な少女。
素朴なスウェーデンの田舎娘といった感じで、男を知らない純真無垢な仕草や発する言葉が今後の展開を助長させる。

グレダとエイナール、そして姪のインガ…さらに青年のカール。
金と欲と愛が絡み合い、少しづつ大人の世界に引き込まれるインガの不安定な表情が何とも言えない。

モノクロ映像の光と影のバランスが各登場人物のココロの浮き沈みを描写し、一方幼さ残るインガのあどけない表情と大人の女の顔つきに変化するバランスが光と影の背中合わせのようで美しい。

印象に残るシーンは多々有るが、ゼンマイ仕掛けの人形に首を傾げ夢中になるインガの幼表情、青年カールの車のエンジンを噴かす音でインガがベッドで…。


しかし純粋なココロというのは大人になっても、時には必要なんだと思わせるものです。
インガが大人たちが思う想定外の行動に愕然とさせられるけど、それがインガにとって素直な感情を人生で初めて自らの意志で行なった素晴らしい事でもあります。

この『早熟』という邦題はタイトルが少し安易で安っぽく思わせぶりですが、男女の複雑な人間関係がとても面白い。原題の『INGA』（登場人物の少女の名前）の方がシンプルでいいと思うのですがね。

たぶんこの映画は10代の時に観たら、退屈で大人達は都合が良すぎるなぁと思ったでしょう。
しかし年齢を重ね様々な経験をし改めて観れば、登場人物の一人一人の心理や行動に否定できない自分に気づきます…(u_u)

マリー・リシュダール主演の洋ピン。

この手の映画は決して面白くはないけど、なんだか良い。マリーリシェダールが魅力的。