ちろる

母が教えてくれたことのちろるのレビュー・感想・評価

母が教えてくれたこと(2016年製作の映画)
3.7
主人公は余命間近の母親に会うために10年ぶりに故郷戻ったゲイのコメディライター。
もうすぐ母親が亡くなるという事実を目の前にして見つめなおす親子関係と、自分自身について。
と、書くと結構ありがちな余命ものっぽいですが、地味で静かな印象の作品でありながらも所々にコメディ要素を取り入れて、日常にあるほのぼのとした雰囲気もある作品。
余命間近の母親を演じるモリー シャノンのやつれていく演技は素晴らしかったが、作品としては特に目立たせようとはせず、母の死を目前にして変化していく世の中への視点なんかを描いているのかもしれないと感じる。

例えばまだ死がずっと遠くにあった頃、病気なんて無縁だと思ってた頃。
老人に気にかけなかったり、身体が辛そうな人に気がつけなかったりしていたけれど、家族や大切な友達、そして自分が死や病気に向き合った時初めて気がつける視点がったりする。
主人公デヴィッドもLGBTである自分の疎外感に苦しみながら、排他的になかば家族からも逃げるように孤独の中で生きていたけれど、久しぶりに母と向き合った時に辛いのは自分だけではないことに気がつく。
大切な人を失うことはとても悲しいことだけど、皆がそれを通過して少しずつ他者の痛みに敏感になるようになるのだとこの物語で気づかされる。
だから涙満ちたオープニングから始まるけれど、この作品は決して悲しみの作品ではないのだ。
「再生」「出発」の作品だというほうが府 腑に落ちてくる。
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