シルクロードを中心に発達した伝統的な民族楽器と、西洋オーケストラの融合・革新を試みる、世界的チェリストのヨーヨーマの手により2000年に本格始動した「シルクロード・プロジェクト」。
そこに参加するメンバーたちが歩んで来た人生や、彼らのルーツである文化的アイデンティティ、その直面する危機等を辿りつつ、世界の多様性と、音楽による融合の意義を提示するドキュメンタリー映画。
主な登場人物は以下の5人。
中華系でありながら、パリ生まれアメリカ育ちで、子供の頃から天才と言われ続け、流れのままに音楽の道に進んだヨーヨーマ。
2011年に勃発し、現在も続くシリア革命のため、ダマスカスにいる家族と離れて暮らす、クラリネット奏者のキナン。
10代の時に起こったイラン革命を機に、ほぼ着の身着のままの状態で、両親によってたった1人国外に逃されたケマンチェ奏者のケイマン。
文化大革命を経験し、国から逃れる手段として両親から音楽を学ばされた琵琶奏者のウー・マン。
固有の文化を持ちながら、経済的には貧しい土地であるスペインのガリシア自治州出身のバグパイプ奏者のクリスティーナ。
そして、彼らの人生を証言する人々。
シルクロード・プロジェクトのコンセプトや、その音楽をじっくり聴かせるというよりは、次々と切り替わり続ける画面構成と主役たちによって、人生や文化の多様性、その尊重を訴えかける、社会的なメッセージ性の強い映画でした。
明確なストーリー展開があるわけではないので、人によっては単調に感じるでしょうが、シルクロード・プロジェクトの音楽を聴いてみたくなりました。