「森田芳光70祭2024 in 新文芸坐」の2作目は
森田芳光監督の時代劇「武士の家計簿」です
冒頭に宇多丸さんの前説がありました
今でこそ時代劇の一つのジャンルとなっているサラリーマン時代劇
その原点のような作品だそうです
原作は「武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新」という新書
実際に見つかった家計簿についての解説書のようなもので
それを元に物語を膨らましたとのこと
このような情報をインプットしてから鑑賞できるとより作品を楽しめるのでありがたい
時代劇といっても
本作の主人公は加賀藩の御算用者という会計処理をおこなう役人です
ひたすら、そろばんを弾くのみ
この主人公猪山直之(堺雅人)の家は代々御算用者の家系
息子の成之の4歳を祝う宴の準備の際に猪山家の借金が膨れ上がってることを知り
倹約生活が始まる
息子の宴の食事でも鯛ではなく鯛の絵を代用
世間体よりも猪山家を守るために徹底的な生活の見直しをするのが本作の見どころ
はい、絵的にも至って地味です
ただ各登場人物のキャラクターが魅力的
倹約生活を始める際の
集めた骨董品や着物を売るの渋る母(松坂慶子)と父(中村雅俊)がとにかくコミカル
可哀想な状況ではあるが自業自得な状況
とにかく駄々をこねて抵抗する姿にシリアスなムードが一変してコメディな展開に
終盤は息子の成之が、そろばんに全てを捧げた父(堺雅人)を否定し確執となるが
時代は明治へと移り、会計業務をおこなえる成之に高い価値が見出されていく
否定した父から受け継いだスキルこそが新しい時代で通用する武器になっていくという…そんなよく出来すぎている物語
元々の原作が当時の家計簿について解説された新書なので、猪山家については色々脚色されているのだと思います
ご都合主義だって構わない
父(堺雅人)を背負う息子の姿で迎えるラストが素晴らしいんだからそれでいい
時代劇が少なくなっていく中で時代劇のスタジオで撮影できるサラリーマンジャンルの構築は大発明です
アフタートークの中で
助監督の増田さんがお話しされていた
極寒の川での撮影のエピソード
時期的に川の中での撮影が困難と思われていたシーンの準備段階で
森田芳光監督から特殊な水着を作ってる会社(山本化学工業)の情報を聞いて
助監督の増田さんは特注で肌色のウェットスーツ作ってもらい無事撮影が出来たとの事
さらに撮影の沖村さんが話していた森田芳光監督がステディカムがあまり好きでないというエピソードも興味深く
ステディカム特有の映像の滑らかさが逆にカメラの存在を意識させてしまう
言われてみると確かにステディカムの映像ってカッコいいけど不自然も際立ってしまう
映画の映像としては相性が良くないという考えも納得でした
観賞後に裏話も聞けて貴重で楽しい時間でした
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武士の家計簿
トークショー付
【上映後トーク(60分)】
宇多丸、三沢和子(映画プロデューサー、森田芳光監督夫人)
ゲスト:沖村志宏さん(撮影)、増田伸弥さん(助監督)
2024/12/14(土) 16:40~
スクリーン : SCR1 座席番号 : D-13