こーべい

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のこーべいのレビュー・感想・評価

4.4
『人生の一日を費やすに値する3時間56分だ。』
との売り文句にまんまと心惹かれて観に行ってきた。
上映時間236分。
「映画鑑賞」というより「映画体験」が適切かもしれない。ちょっとした台湾旅行にでも行くくらいのテンションで観たほうがよい。(痛むケツもLCCの座席と思えば苦にならない。)

泣いた!とか感動した!とかそういった類の感想はあまりなく、行ったことのない台北の、それも自分は産まれていない時代のその場に居合わせたかのような感覚だけがあとに残った。

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ヒロイン「小明(シャオミン)」について。
劇場を出たとき、
「え、これがヒロイン?と思った。」
との会話が聞こえてきた。

たしかに塩顔を超えた幸薄顔。
決して花があるタイプではない。
だが、男ばかりの社会で男を利用しながら地位を確立していく典型的なタイプだなと思った。
群れず、媚びず、孤高でありながら、たまに見せる弱さ。
悪魔でもあり、天使でもあり、答えは受け手のみぞ知る。

「私が男だったら兵役にいきたい。」
みたいな発言があったが、ああいうこと言う女にいつの時代も男は弱いんなだと思った。(そんな発言を言わざるを得ない背景を勝手に想像して、守りたくなるのかな。)
あと、シャオミンって語感がよい。呼びたくなる名前って大事だと思った。
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1960年代台湾という舞台について。
そのまま計算すると小四は70歳くらいで、日本で言うちょうど団塊の世代だ。

今みたいに不良がファッション化されていない。
すごく失礼な言い方をすると猿山のボス争いのように動物的に強いやつがのし上がっていく弱肉強食の世界。
やばいヤツは本当にやばいけど、その中には案外インテリがいたりする。

あと家族が狭い家で食卓を囲んでいる風景も、つい20年ほど前には日本にも当たり前にあったこと。いろんなことが台湾って本当に日本とよく似ているなと感じた。

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名前が覚えにくい問題について。
登場人物が多い上に、全体的に顔アップが少なく、顔すらハッキリ認識できない状態で話が進んでいく。

他の方のレビューに書かれていたように、事前にパンフレットの人物相関図に目を通しておいたのでずいぶんマシに観ることができた。

特にわかりにくいところだけ整理しておくと以下。
・「小四」→主人公の名前。実際は中二。張震と呼ばれたりもする。
・「ハニー」→小公園グループのリーダー。石原軍団にいそう。
・「滑頭」→ハニーの後釜を狙ってる。
・「王茂」→小柄な友達。ボーカルとしては小猫王と呼ばれる。
・「小馬」「小虎」→金持ちの友達が小馬、バスケしてる無表情なのが小虎。
・「葉っぱ」→人の名前なので注意。
・「クレージー(神経)」→敵対グループの山東が重要なシーンで叫ぶが、狂ってるわけではなく彼女の名前。もはやトラップ。
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映画を撮る側の人たちに特に評価されるんだろう。光と闇、静寂という名の音を感じられる作品。