ヴェルヴェっちょ

ムーンライトのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.5
沁みる。なんて繊細な映画なんだろう。
どストライク。

三部構成で描かれるドラマ。
【第一部】リトル
シャロンは、マイアミの学校で“リトル”というあだ名でいじめられている内気な少年。
ある日、いつものようにいじめっ子たちに追われていたところを、麻薬ディーラーのフアンに助けられる。 その後も何かとシャロンを気にかけるようになり、やがてシャロンも心を開いていく。
母親のポーラが麻薬を使っていることに勘付いていたシャロンにとって、家に帰っても居場所はなく、フアンと同級生のケヴィンだけが心を許せる唯一の“友達”だった。

【第二部】シャロン
高校に進学したシャロンだったが、相変わらずいじめられていた。母親は麻薬に溺れ、酩酊状態の日が続く。
ある日、同級生に罵られ、大きなショックを受けたシャロンが夜の浜辺に向かったところ、ケヴィンが現れる。月明かりが輝く夜、2人は初めてお互いの心に触れることに…。
しかし翌日、学校である事件が起きてしまう…。

【第三部】ブラック
成人し、高校の時と違って体を鍛え上げたシャロンは、母親とジョージア州アトランタに移り住んで、弱い自分から脱却して心身に鎧をまとっていた。
ある夜、高校以来音信が途絶えていたケヴィンから突然連絡が入る…。

静かな映画だった。
怒濤の展開があるわけではない。どちらかというと描かれているのは寡黙なシャロンの心象風景のように思える。
いじめられても、母親と不仲になっても無言で耐え続けるシャロン。
言葉にすれば、孤独、不安ということになるだろうけれど、この映画はもっと繊細な感情の機微を映し出している。 言葉にならないからこそ、このような映画があるんだと思う。
心象イメージを詩的に描き出す巨匠といえばテレンス・マリックが浮かぶが、彼の映画は正直観る者を選ぶ、試練のような映画だと思う。
一方この映画の監督は、日常を丹念に描くことで内面世界を表現しており、とても入りやすかった。