Eike

サマー・ヴェンデッタ/ボドムのEikeのレビュー・感想・評価

3.0
珍品フィンランド製のスラッシャーホラー。

80年代、膨大な量の米国産のホラー映画が世界市場に供給されたことから、それらの洗礼を受けた各国の作り手達が自国でホラー映画を作り始めたのが90年代後半。
既に各種のお約束やフォーマットはデフォルトとして普及が完了していて「国際標準化」が出来上がっているような雰囲気がありました。
しかし単にアメリカ製のホラー映画をなぞるのではなく、そこに何らかの要素をプラスしたり各国の文化的な背景を活かすことや、設定をひねったりする創意工夫も見られるようになりホラー映画の「多様化」が進んだことは喜ばしい。
それぞれの作品にはお国柄や地域性・文化的な要素が自然に反映されて独自色の強いホラーが登場するようになってきた印象がある。
その最右翼は一時期容赦ない描写を盛り込んだ諸作品を世に送り出したフランスだったりするのでしょうが本作は比較的マイナーな北欧産です。

かつて未解決の惨殺事件が発生した湖、Lake Bodomに出かけた男女4人組。
それぞれの思惑を胸に、たき火を囲んでかつての事件の真相に思いをはせるのですが...。
とあたかも13日の金曜日をお手本にしたような導入部で始まる物語は、しかしやがて思いもよらない展開を見せることになって行く...。

確かにこの導入部からはこのエンディングへの帰結はまぁ予想が付かないだろう。
ただ、その分、はっきり言ってかなり無理な展開・お話になっている気もします。
この超展開の内容自体は「アイデア」として評価に値するのも事実なのだが。

面白いのはこのベースとなったBODOM湖で起きた惨劇というのは史実に基づいている点。
湖に遊びに来ていた2組の男女が何者かに襲われ一人を除いて殺害されたという事件は実際に起きた物であるそうな。
結局、紆余曲折はあったものの事件の真相は今に至っても謎のままであるらしい。
本作はその事件と直接関連は無いのだがベースとなる部分にこの史実の秘められた要素が取り入れられていて、その意味でアイデアは盛り込まれた作品と言えます。

ただ、惜しむらくは登場人物たちそれぞれの動機や行動に意外性はあっても信憑性が足りない点。
端的に言えば奇をてらった展開はサプライズのための道具に見えてしまい、物語としての面白さが損なわれている気がするのです。
物語の弱さをカバーするべく、本来ならその展開に持ち込むまでのドラマ部分や人物描写を補強するか、物足りない分を過激な描写でカバーするなりして形を整えるべきなのだろうが、残念ながらそうした点において本作の力不足は否めない気がします。
そのため、エンディングについてもホラーとしての不穏さよりは唐突な不条理さが残されてしまっているように感じられるのが残念でした。
Eike

Eike