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女神の見えざる手の隣のレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.8
あぁ……一年の最後にこの映画に会えてよかった。好きすぎて泣いてしまった。

「実社会が嫌なら改革するのが仕事」
「ロビー活動は予見すること、敵の動きを予測し、対策を考えること」
「有能なロビイストが、勝つ能力以外に信じるものは……」

なんと格好よい主人公であることか。しかし英雄的に描かれるのではなく、どちらかというと闇に沈み、深い影を落とした、破滅的な格好よさ。己自身も周囲の人間も壊してゆくような、必ずしも全肯定できるような生き方ではない。
しかし私はこんな女性になりたかった。なりたかったんだよ。いつの間にかのうのうと日々を生きるばかりになってしまっていたけれど。いや、なるためにこれからも努力しなくてはと思った。うわ〜惚れる!

辣腕でワーカホリック気味のロビイスト、エリザベス・スローン。
目的のためなら手段を問わない仕事人ながら、譲れない信念があり、捨ててきた別の可能性への未練や、誰も信用できない孤独を窺わせる人間味もあって、嫌いになれない、好きになってしまう。
私がもしコール=クラヴィッツ&Wで働いていたら絶対彼女に怒鳴られこき使われるだろうけれど、彼女が会社を離れる時にそれでもこの人ならばとついていってしまうな、きっと。

強い政治社会的メッセージを孕み、ウィットな会話とふんだんなく盛り込まれた情報量に釘付けになってしまうポリティカルサスペンスでありながら、
最後のどんでん返しで明かされる強い信頼や、
聴聞会の証言台に立ったエスコートサービスの男の言葉など、
孤立無援というわけでなく、水面下には確かに人の優しさ(という言葉は生温すぎるな。人間捨てたもんじゃない、という一筋の希望の光とでも言おうか)が感じられる人間ドラマでもあって、
そのさりげなさがまた、最高すぎる……
これ見よがしに、絆!とか優しさ!を見せつけるのでないところにリアリティがあってとても良い。

FILMAGAさんで書かれていた考察を読んだら、またなるほど〜〜〜!?!?!と目から鱗で、もう一度見なくてはと思った。

https://filmaga.filmarks.com/articles/2486/

緻密に組み上げられテンポよく進んでゆく脚本と、尖っているのに複雑な最高の女主人公エリザベス、それを演じたジェシカ・チャスティンさんに万雷の拍手を送りたい。
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