話題作注目作の多い2017年秋。埋もれがちな作品なだけに、映画好きには見逃して欲しくない一本。超面白いです。
「ロビー活動とは常に相手の先手を打つこと」「騙しても騙されないこと」
政治ロビー活動を題材にした社会派サスペンスとなると重くなる印象がありますが、凡百のアクション映画よりも遥かにテンポ良く、スリリング。
銃弾の代わりに絶妙な台詞が飛び交い、切れ味鋭い編集が物語を踊らせる。最高のヤツです。
天才的ロビイスト、エリザベス・スローン。
アンチヒーローならぬアンチヒロイン。
勝つ為には敵も味方も利用する、手段を選ばない女。
食事は「遅くまで開いてるから」といつも中華料理。睡眠不足をドラッグでカバーし、「男」でさえエスコートサービスでさっさと済ませる。
そのモラルと人間性を欠いた、まるでスコセッシのピカレスクロマンの主人公の様なヒロインが、とてつもなく魅力的。
彼女が如何にしてその様な人物になったか?何を持ってその信念を決して曲げないのか?
明確な説明や描写がなされないのですが、それでも人物に説得力を持たせて、観客に感情移入させる事に成功している事自体、尋常じゃない。
ハマり役だった「ゼロダークサーティ」マヤの変奏の様なヒロインを熱演したジェシカ・チャステインに敬礼。
そんな「怪物」の相手役を務めるマーク・ストロング、マイケル・スタイルバーグの控え目ながら、確かな佇まい。エラそうですが、ホントいい役者ですわぁ。渋いです。あと、メガネが印象的過ぎるアリソン・ピル。おいしいトコ持っていきます。
しかし、実際の政治的駆け引きや、銃規制という大きな社会問題をエンターテイメントとして描きながら、しっかり問題提起してみせる。こういう映画にも自分はハリウッド映画の伝統を感じます。
見事なストーリーとキャラクターを創造した脚本のジョナサン・ペレラ。
もともと弁護士だったのを退職し、韓国で英語教師をしながら、独学で本作を執筆。処女作がハリウッド映画化とかいう、どこの天才ですか!?
憶えておきたい名前です。