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エゴン・シーレ 死と乙女の土偶のレビュー・感想・評価

エゴン・シーレ 死と乙女(2016年製作の映画)
4.4
大好きなエゴン・シーレの伝記映画で彼を取り巻く女性たちとの関係を、中でも特に彼にとっての最高のミューズであるヴァリ・ノイツェルを主軸に描く物語。
スモックを着たクリムトと猫からストッキングを穿いたヴァリまで登場人物が確かに絵や写真で見る本人と似ている上に、シーレやクリムトの絵も大量に出てくるし、ウィーンのカフェやゼセッションも登場し、そしてスペイン風邪と戦争で荒廃したウィーンなどとてもリアルで19世紀末から20世紀初めの雰囲気がとてもよく出ていたように思う。
彼の芸術家としての「正史」ではぼかされたりスルーされがちな妹ゲルティとの関係、エディットとの結婚とヴァリとの破局など彼のエグい側面がかなり描かれていたように思う。
エゴン・シーレ好きにとっては彼の絵と、モデルでおなじみの女性が動いている様が見られるというだけで胸に迫るものがあるし、シーレの才能あふれる超絶イケメンの最低男っぷりもさもありなんな感じだ。
彼が愛欲にまみれて生きていたのは事実としても、突然行為の最中に天啓に打たれる様を描き、ただ快楽に溺れるのではなく常に芸術と共にあった人間として描かれているのが印象的だ。
オーストリアが作った映画だけあったかなり史実に近い物語だったように思う。
映画で話されていたのはドイツのドイツ語より柔らかく感じた。オーストリアのドイツ語かな?
彼はその美貌と才能というフォースからくるダークサイドとの本当の戦いを行う前に28歳の若さで世を去った。
彼が生きて死んだ彼を取り巻いた世界と女性たちはこんな感じだったのかな?と思えるいい映画だった。
アートは感情を揺すぶられるなぁとつくづく思った。
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