あくとる

アンダー・ザ・シルバーレイクのあくとるのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

出た!!!今年ベスト級!!!!!
デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の前作"It Follows"からして、ただ者ではない雰囲気がビンビンでしたが、ついにその世界が全開になったパラノイアックな怪作。





気になっていた隣人の美女サラが突如失踪し、その謎を解き明かそうと奔走する無職(?)の主人公サム。
手掛かりは、犬殺し、スカンク、カートコバーン、ヒッチコック…
主人公を取り巻くあらゆるものが、彼をハリウッドの闇へと導き、次第に彼は亡霊に取りつかれたかのように謎の核心へと突き進む。
この街の謎の全てが陰謀論でつながっているのか?
それとも、実際には意味など無い主人公の妄想・ハッタリなのか?
不穏かつ性の匂いが充満した物語に翻弄され、思考を促され続ける悪夢の140分。

ぶっ飛んだ出来事の数々が繋がっていく様、全ての物事に暗示を見つけ出そうとする主人公の行動に対して、"陰謀論なんて馬鹿馬鹿しいだろ?"と笑っているようでもあり、"無理にでも意味を見つけなきゃ生きていけない人生の辛さ"、"理解不能という恐怖"を描いた切実なメッセージにも感ぜられました。
複雑過ぎて到底理解することのできない底無し沼のような世界に対して、恐怖や生き辛さを抱える人々が、その痛みに耐えるための薬としての陰謀論。

アンダー・ザ・シルバーレイクはハリウッドで儚く散った人々の夢の墓場。
人生における失敗や挫折に、意味や理由を見出だすことで、"無理矢理にでも"納得・消化しないと人は生きていけない。
成功を掴めなかったことを、犬のせいにして恨んだ俳優のように。
(アメイジングスパイダーマンのコミックを投げ捨てるアンドリュー・ガーフィールドに思わず笑った)

前作に引き続き美しい画面の連続ですが、本作では思わず口がポカンとしてしまうような度肝を抜くカットやカメラワークもふんだんに盛り込まれています。
不穏なムードを煽る(ちょっぴり過剰で笑っちゃうような)音楽も素晴らしく、ワクワクさせてくれます。
中でも白眉となるのは、自分が愛してきたポップカルチャーが全否定される悪夢のようなシーン。
あのシーンには心底ゾッとしました。

ラスト、謎を解き明かした(?)主人公がたどり着いた地で、ついにテレビ電話でサラと対面する。
そこで彼女が発する"それでもここで生きていく"という決断に、 力強くも暖かいメッセージを感じ、不覚にも感動させられました。
まさか、この映画で胸を熱くすることになるとは思ってもいませんでした。





一度見た限りでは、このトリッキーな映画の10%も理解できていない気がしますが、現時点で私が感じ取ったことは上記の通りです(もしかしたら、"意味など無い"というのが答えかもしれませんが)。
この映画が良い出来なのか、それとも悪い出来なのかは全く判断できません。
しかし、それでも確かなのは、この映画体験がとてつもなく楽しかったということです。
人を選ぶ作品かもしれませんが、ぜひ一度見て欲しいです。
とにかく鮮烈に記憶に残ることは間違いないと思います。