なおこ

名前のなおこのレビュー・感想・評価

名前(2018年製作の映画)
3.7
幾つもの嘘の名前と偽りの経歴を使って暮らす中年の男。そこへ現れた謎の女子高生。そんな2人のお話。

予告に惹かれ鑑賞。ツツツツツンデレおっさんが見れるかと思いきや素直な作りの映画だった。これも青春映画なのかも知れない。若い俳優さん達がとても良かった。
誰なんだお前は!?と初めこそ大混乱だったのに。ワケ分からんまま流され受け入れるデレ適用の早さは、別の名前で生きてきた彼の処世術だったのかも。

カレーを食べて、釣り堀に行って、ただ一緒に過ごして、夜明けまで歩いて。穏やかだと徐々に感じる時間。その中に何度、必死な切実さを見たか。
その後の2人の関係は分からない。思い返した時に、少なからず、寄り添った時間が大切だと思えたなら。2人にとっても優しい偽りになったのだと思う。彼女が大人になった時に、人知れず誇らしくなる程には。

普通の社会人、とは言えない主人公。一見普通に見えて、凄く色っぽいのに天真爛漫で。老いても若くも見える津田寛治。その独特の雰囲気が作品にも主人公のキャラクター性にも合っていた。

最近、不幸で無くとも幸せでもない子供の話、青春が含まれる映画を観る機会が多いのだが。その幸せでない度合いって人其々だし、誰にも気付かれない程度の不幸だってちゃんとした不幸だし、子供も日々理不尽と戦っているなって。そう言えば私だって子供として戦ってた。

過去のツケというのは何度となく払わされる。同窓会のシーンの痛さよ。でも生きてる。人生100回くらい失敗して、それでも生きてる。それが良かった。
なおこ

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