凪子

残像の凪子のネタバレレビュー・内容・結末

残像(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

前半の柔和な芸術家、良教師の顔から一変して、社会主義による芸術への否定から身を呈して戦おうとする老人の顔には深い苦悩の皺が刻まれて行く。自分の生きてきた道に指針として突き立てていた手段は、これからの生きていく道の手段とはなり得なかったのだ。必死に抗うその姿はある意味滑稽でもあり、しかし胸を打った。最後のシーン、マネキンにしがみついたまま倒れ、その全てがそこでもう力尽きたような形で体を投げ打った彼は、最後まで芸術を諦めない不屈の精神のまま死んだので、私は彼にとってそのエンドが良いことだと感じた。なぜならそのまま彼は生きていたら芸術が政治に利用されることを生きていくために了承し協力せざるを得なかったと思ったからだ。観た後の脱力感と、どう私はこの物語を捉えればいいんだろうか…という頭の中の靄を丁寧に考える時間が必要な作品だった。
凪子

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