モカ

タリーと私の秘密の時間のモカのネタバレレビュー・内容・結末

タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ネタバレせずに書けないので仕方ない。
家庭の有無にかかわらず、30代以上の女性にはかなり響く映画。
ヤング≠アダルトと同じく、監督+シャーリーズ・セロンのペアだけど、こちらの作品のほうがずっと良かった。


長女は真面目で大人しいけど、長男は自閉症スペクトラム気味で手のかかりすぎる問題児。
優しいけど鈍感すぎる旦那に頼れずワンオペ育児。
そこに予定にはなかったベビーが誕生し、まさに急転直下の地獄絵図!

そこに突然現れたタリーという名前の不思議女子。
叶わなくて悔しがるような夢なんてなかった、というマーロに疑問を投げるタリー。


貧しい親の元、何人もの継母に育てられたマーロの夢は
普通の子どもがいる普通の家庭で、何もない普通の毎日を送ること。
それが一番の夢じゃなかったの?今はその夢が叶っているのに空っぽなの?というタリーに
自由に生きていた頃の自分を思い出すマーロ。

狭い部屋でヴァイオレットと同棲し、自由奔放に輝いていた時の若い自分と
女友だちと暮らしていながらボーイフレンドと気軽に遊び、未来を信じるタリーが重なり
このあたりで視聴者は「あれ?」と思い始めるはず。

タリーの聡明さは、若い頃の自分に伝えたかった知識そのもの。
タリーの頼りがいや親しさ、ダメな自分もすべて肯定してくれる寛容さは
今一番欲しい存在そのもの。


そしてこのストーリーにはいくつもの隠喩が出てくるんだけど、車もおそらくその一つ。

お金持ちの兄夫婦は、嫌みなく高級車を見せつける。
対して、古くて地味な車=マーロそのもの。

いつものパーキング=普段の生活、に留められないことで奇声をあげるジョナ。
マーロの運転席をがんがん蹴って泣いてわめいて不満をまき散らす。耐えられず文句を言う長女。
イライラが伝染したベビーのギャン泣きは、車が爆発しそうなほどの大音量パワーボイス。
我慢の限界を迎え、震える手でバッグの中からナニーの電話番号メモを探すマーロ。

『もう一人の自分=タリー』を作り出さずにはいられない逼迫した世界観が、すべてマーロの車に凝縮されている。
そして最終的に、溺れる間際シートベルトをはずしてくれるのはそのタリーだった。


単なるコメディでは終わらない、まさに不思議な時間。
後から考えて、納得する箇所の多い映画でした。


ヴァイオレットの女優、なんか見たことあるなーって思ったら
『ハンドメイズ・テイル』のオブフレッド(変わったあとの方)の方でした。
それにしても、シャーリーズはアップでも肌綺麗ですね・・・
モカ

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