くりふ

グッバイ・クリストファー・ロビンのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【ぬいぐるみの中は血まみれだった】

劇場公開中の『プー僕』には、ディズニー商法の嫌らしさを感じるが、ネタ元同じだがDVDスルーとなった、英国映画のコッチには興味湧き、レンタル始まったので借りてみた。

深掘りはなく堅さあるものの、事実から適度に考察された良作でした。クマのプーさん誕生“悲”話ですね。デフォルメされていようとは思うものの、成程ね、と納得できる部分も多々あり。

クリストファー・ロビンに関しては、自伝も伝記本も出ているし、時間あれば、一度じっくり向き合ってみたいのですが…。

莫大に膨らんでしまった“有名税”をどう支払えばよいか苦悩する父子の物語。モデルにした幼い息子を、作中も同名・同じ姿で描いてしまったがため、「クマのプーさん」爆発的人気に伴い息子のプライバシーは食われてゆく。それは家族の破綻へと繋がって…。

映画では和解っぽく終わりますが、実際は父が死ぬまで仲たがいしていたそうな。ディズニー製はちみつ味アニメだけ見ていたら、こういう人として大切なことはわかりません。やっぱ危ないディズニー妄信。

父A・A・ミルンと母ダフネ、親としては脇の甘さが描かれ、母は傲慢でさえありますが、悪人とは断じられない。ナニーに頼り切りだった、当時の子育ての弊害も、端的に描かれていました。

幾つかの条件が重なり、プーさんという人気者が誕生する経緯は興味深いのですが、第一次大戦従軍のトラウマを抱えた作者ミルンが、戦争とは正反対の世界を描いて癒し・癒されたかったことは大きかろう、と思いました。

同時期の大戦後、英国の美しい森で、子供が現実を侵食する幻想と出会う事件…という点で、「コティングリー妖精事件」と近しいな、とも思いました。本作と映画『フェアリーテイル』(1997)など比べてみると、とても興味深いです。

ミルン役ドーナル・グリーソンは子育て下手の父に嵌る。マーゴット・ロビーも美貌がプラスに働いて役得。ナニーでクッションとなる役どころ、ケリー・マクドナルドも地を固めるように、よかったですね。

<2018.10.22記>
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