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天才バレエダンサーの皮肉な運命のkiritoのレビュー・感想・評価

3.8
【踊りを放棄すれば身の破滅だ】

これは面白かった。
見てきた映画の本数は誇れる数じゃありませんが、その中でこんな映画の構成は初めてみたような気がします。

天才(皮肉)バレエダンサーのアレクセイは20年前のある事故で現役から退いていた。
そんな中、彼は普段通りの日常を送っていたが、様々な要因が重なると共に、20年前本当は何があったのか明らかになる。
そして、彼は人生をかけて最後のダンスに挑む…


まず、全体的に長回しのシーンが多かった。
しかも定点カメラではなく移動式のカメラ回しなので、場所を移動しながらの撮影に苦労されのだろう。
特に最初の長回しシーンで主人公の人となりがなんとなくわかり、物語に入り込みやすくなった。

構成が特殊だと思ったのは、ときおり謎のカットが挿入されていることだった。
しかも、まったく関係ないものだったりするのでその数秒の意味を考えていたのだが、最後の5分ほどでそれが明らかになる。
最後まで見ると途中に挟まれていたカットが遡って理解できた。

そして、主人公の皮肉ぶりがまたおもしろい。
彼の一挙手一投足が皮肉に満ちていて、相手に対する返答等何度も笑わせてくれる。
なのに、なんとなく人間らしい部分もあり、優しさもあってこれもまた好感がもてた。
もっとも、『音楽がわからない奴は相手にしたくない』と言い捨てるほど傲慢さも持っている。

この映画では天才という割には主人公のアレクセイはなかなか踊ってくれない。
本当に天才か?と思うのだが、その姿は最後に明らかになる。
ここのシーンこそ、この映画の要であるのだが、それまでのコメディ風なイメージを払拭するような息を飲む演技だった。


『絶望の経験をした人こそが達成できる』
人はそれぞれに『生きる意味』を持っている。
それは『生きる価値』と変換してもいいかもしれないが、周りの人の目を気にせずにいかに自分の人生、自分のゲームを楽しむか。
いかに、自分が『生きた証』を残すことができるのか。
死の床で『我が人生、一片の悔いなし』と言って拳を突き上げて人生終わりたい。


※フェラーリーの高級車がクソかっこよかった。
主演のセルゲイさんカッコよくて他の作品もみてみたくなりました!

2016.11.2
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