Jun潤

オリエント急行殺人事件のJun潤のレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.4
2022.05.24

『ナイル殺人事件』は鑑賞済み。
2作目公開前に間に合わなかったので、順番は前後しますがケネス・プラナー監督・主演のアガサ・クリスティ現代版実写作品シリーズ1作目を今回視聴です。
原作はアガサ・クリスティ作品の代表作の一つで、今作が2度目の劇場映画化、日本でもスペシャルドラマが制作されたり、『名探偵コナン』の長編シリーズに今作がモチーフとなったものがあるなど、日本国内でも名作に挙げられている。

名探偵エルキュール・ポアロはエルサレムからオリエント急行に乗ってロンドンへ向かう。
ポアロは車内で新参の古物商ラチェットと知り合い、鑑定士と揉めているため警護を頼まれる。
走行中、雪崩の発生によりオリエント急行は停車し、その間にラチェットは何者かに殺害される。
警察に後事を任せると罪もない人が処刑されてしまうと友人のブークに説得されたポアロは、殺人犯を探すため捜査に乗り出す。
捜査の結果ラチェットの本名はカセッティで、過去に起きた重大事件のアームストロング事件の犯人であることが判明する。
さらに乗客への事情聴取を進めるにつれ、次第に明らかとなる乗客同士の奇妙な人間関係。
人殺しを殺す事件、この真相の行方とはー。

なぜ乗客全員にアリバイがあり、不確実な証拠が次々に出るのか。
全ての謎はポアロによって、過去の凄惨な事件に端を発した、哀しき事件の真相へと行き着く。
命には命を、罪には報いを。
殺人を許さないポアロにも捌くことのできない罪。

荘厳な自然の中を走るオリエント急行、車内では極上の食事や耽美な食器など、大きな背景から細かい部分まで作り込まれた画面の完成度に惹き込まれますね。

物語的には登場人物が多い中で全員に事情聴取し、それぞれに事情や背景があったため、キャラ相関の掴みにくさはありましたが、停車した電車内というクローズド・サークルが見事なまでに機能していたことにより、鑑賞後感はスッキリとしていてなかなかに苦味が効いていました。

キャスト陣についても、事件捜査の進行につれてキャラクターが持つ二面性を浮かび上がらせる巧妙さと重要さが、表情に如実に描き出されていました。

真相を暴き、事件を解決し、正義を貫き通すという、探偵ものの王道をあえて外すことで、逆説的にその重要性と儚さが作品の根底で描かれていました。
Jun潤

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