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台北ストーリーの一人旅のレビュー・感想・評価

台北ストーリー(1985年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
エドワード・ヤン監督作。

現代の台北を舞台に、幼馴染の一組の男女の関係性を描いたドラマ。

台湾ニューシネマの旗手:エドワード・ヤンの長編第二作で、現代台湾に生きる男女の姿をシビアな視点で見つめています。主演を務めたホウ・シャオシェンはヤン監督の盟友であり、シャオシェン自身も『童年往事 時の流れ』『恋恋風塵』『悲情城市』といった台湾ニューシネマを代表する名作を撮ってきたことで知られる著名な映画作家であります。

経済成長により激変を遂げてゆく台湾の首都・台北の喧騒的光景の中における、過去に苦しみを抱えた物静かな男と未来に希望を抱く女の関係性の変容を描いたドラマで、幼馴染の両者の人生観が対比的に交錯していきます。男が過去に固執する人間であるのに対し、女はアメリカへの移住を夢見る未来志向型の人間で、子供の頃から一緒に育ってきた二人の、大人になってからの生き方の相違が恋人同士だった両者の距離を少しずつ離れさせていきます。

富士フィルム、NEC、SONY等80年代半ばに絶好調だった日本企業の大型ネオン看板が繁華街でひと際存在感を示していて、資本主義の盛り上がりに伴う台北の過去から未来への劇的移り変わりの一時点をその眩い映像から読み取ることができます。

変わりゆく台北に自身の生き方を適応する女と、そうしない不器用な男。ネオン煌めく繁華街の中ではなく、粗大ごみが不法投棄された人通りの少ない暗い夜道をひたすら歩く男の姿が時代から忘却されてゆく人間の哀しみを物悲しく代弁しています。

蛇足)
エドワード・ヤン監督作品 ~個人的おすすめランキング~
1、『エドワード・ヤンの恋愛時代』(1994)
2、『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)
3、『クー嶺街少年殺人事件』(1991)
4、『カップルズ』(1996)
5、『恐怖分子』(1986)
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