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THE BATMAN-ザ・バットマンーのDのレビュー・感想・評価

3.9
鑑賞し終えた直後は「悪役のvillainityとも呼べるものの希薄さというか、逆にバットマンの正義の希薄さというものが心の変な隙間にしこりとして残っているなー」と思ってましたけど、鑑賞から15分くらい経って、逆にそれが良かったと思うようになった。物語全体の終着点の欠如とそのような目的性の欠落した全体像が、ちょうど雨模様の空によって眼前で広げられる靄のように、交わろうとせずに融解し収斂していくように感じられた。
ニルヴァーナとアヴェマリアの対比的な使い方にも意図を感じたし、おっさん臭さと鉄臭さが同居しているのも魅力的だった。メインテーマの使い方が素晴らしい。

カーアクションもかっこいいし、銃口から乱発される瞬発的光だけで暗闇の戦闘を彩るのもよかった。
我々には理解できない進み方をする「愛とは呼べない何か」も、そのわからなさが素晴らしいんですよ。

それぞれのシーンの決着が地味なのも、上に書いたテーゼとマッチしていたように思う。

あと暗闇の中から出てくる時の足音と色合いが個人的にとても好きだ。闇の中から闇の生命が静かに高らかな生命の音を立ててゆっくりと、しかしはっきりと向かってくるような。

ブルースウェインの身体が物足りないんだよな。筋肉全然ないじゃん!って。それもまたバットマンとしての駆け出し感を出してるのかなと思うと、逆にあっぱれなんだけど。
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