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THE BATMAN-ザ・バットマンーのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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覗く裏窓、雨降り続く夜の街での猟奇的殺人事件。『セヴン』を思わせるルックで、90年代にあったようなサイコスリラー&ノワール風に始まる。バットスーツにバットモービル、黒目コンタクト、ブーツ、葬式、雨傘、夜の闇でとにかく黒黒黒で統一され、オレンジ色の光や炎がそれを照らす。
覗き趣味でファナティックに病的なバットマン(もともとそういう奴だが)を語り手にして、チャラいブルース・ウェインは出る幕なし。ヒソヒソ声でゴードン警部補と密談し、やることは地味な探偵仕事。そう、これはバットマンがシャーロック、ゴードンがワトソン役の謎解きミステリーでもある(推理はそこまで冴えてない)。
そんなコンセプトでこれまでとはっきり差別化したマット・リーヴス版。ウェインの大事な人は犠牲になるとか、ヒーローとヴィランは合わせ鏡とか従来のテーマを継承しつつ、今ならではの設定をしっかり打ち出した重厚な脚本だった。クライマックスは現実の議事堂襲撃を思わせる。
バットマンもリドラーもハロウィンの連中も扇動されたアノニマスたちも、サングラスを外さないファルコーネもみな覆面。偉そうに大口叩いても匿名だからであって、所詮闇に隠れた連中はロクなもんじゃない。やがて雨が洪水に、夜から夜明けに、バットマンは闇を照らす光となる。この美しく叙事詩的な結末は好き。
バットマン俳優は「顎がポイント」と思ってるのだが、今回は顎だけでなく顔の露出度が大きめ(なので涙ぐましい変装ぶり)で、目の印象が強かった。暗くゴスな顔つきのロバート・パディンソンは、吸血鬼よりもコウモリ男の方が確かに似合う。アンディ・サーキスは泣かせるアルフレッド。ポール・ダノがさすがのキモさだけど、登場の仕方といい帳面派といい、リドラーは完全に『ゼヴン』ジョン・ドゥだよ。ゾーイ・クラビッツは子猫みたいなキャットウーマンで猫である必然性なかったし、ペンギンはコリン・ファレルである必要あったんだろか。バリー・コーガンは顔出しでも1カット紛れてたよね?
てか、理想主義の市長があのくらい支持されるんだからゴッサムまだマシじゃない?あと、探偵ブルースは「例の壁」じゃなく床なんだ!(豪邸だから)
撮影とキャストの演技と徹底した暗さは良く出来てたけど、このトーンでまた続きが観たいかと言えば…。
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