ノラネコの呑んで観るシネマ

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.4
世界一の粉ミルクブランドのセールスマンが、自社の製品は途上国では使えない代物だと気付き、実情を告発する。
中国のメラミン粉ミルクは記憶に新しいが、パキスタンのこの話は知らなかった。
粉ミルクを薄めるだけで、赤ちゃんに深刻な健康被害をもたらすとは驚き。
だが賄賂が横行する医学界は、粉ミルクの使い方まで責任を追わないという会社の味方。
ヤクザまがいの脅しに加え、狡猾な罠に主人公を嵌めて追い込んでゆく。
観ていてあまりの腐敗っぷり、理不尽さに憤りを覚える。
絶望の中で信念を貫く主人公も尊敬に値するが、彼を支えるお父さんと妻も凄い。
本作を作るための企画会議を通して、主人公の体験した事件の顛末が回想録的に描かれるメタ構造。
映画を作ることで生まれる訴訟リスクを制作チームが議論してるのだが、会議は2006年で実際作られたのは2014年。
この歳月が、この種の映画を作ることの困難さを表している。
主人公が働いていたのがネスレと聞いて、「実名を出すのか?とりあえず仮名で行こう」と言ってそれ以降は仮名になるんだけど、もう言っちゃってるからw
便利なものでも、使い方を誤ると毒になる。
倫理より利益優先で、失われる命なんてあってはいけないのに。
ネスレを見る目が変わりますよ。