もちもち

ゲット・アウトのもちもちのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
5.0
写真家の青年クリスはある週末に恋人ローズの実家に招待される。自分が黒人であることに不安を覚えつつ向かうクリスは、ローズの実家に黒人の使用人がいることに妙な違和感を覚える。温かい歓迎を受けつつも、どこか様子のおかしい使用人達。そしてパーティーに集まってきた親戚達へも不信感が募るクリスは家を出ていこうとするが。人種差別というテーマを斬新な手法で組み込んだホラーミステリー。よくあるように人種差別を直接的に描くのではなく、間接的で無意識的な描き方をし、さらにそれをミスリードとしても使うことで、観客自身に内在する無意識な差別感情を炙り出している。後から考察や解説を読んでみると自分の気づいていた以上に緻密に伏線が張られていて感心する。特に最初、警官がクリスのIDを確認しようとするのにローズが怒るのは、黒人への不当な扱いに対してではなく、一緒に行動していた記録を残したくないためだったり。他にも催眠術にかけるトリガーが権威の象徴である銀のスプーンで、そこを脱却する術が黒人奴隷産業の中心だった綿だったり、メタファーの使い方も上手い。オチを分かった上でもう一度見るとたくさん発見があるタイプの面白い作品。ストーリー的には複雑ではなく、連れてきた黒人の肉体を入れ物として、催眠術と脳手術で白人の意識を入れていた、というだけなんだけど、「シャイニング」に通ずるような独特の気持ち悪さの醸し出し方が上手く、どんどん見入ってしまう。何かよく分からないけど不安を煽られる様な演出がすごく上手い。音楽と演技と撮り方でよく分からない恐怖を表現していて、ホラー苦手でも見れるタイプの映画。カメラのシャッターが乗っ取られた黒人の本来の意識を呼び起こすトリガーになるのはなぜなのかと思っていたが、実際に黒人が白人警官によって殺される事件が起きたときに、スマホで撮影していた映像が拡散されて大きな運動を生んでいることから、白人の黒人に対する暴力への抑止力というメタファーの意味合いであることを知って納得。アカデミー賞脚本賞取ってるだけあってこういう細かいところがよくできてるし、人種差別というものをエンターテイメントに非常に上手く融合させている映画。
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