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13th 憲法修正第13条のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

13th 憲法修正第13条(2016年製作の映画)
5.0
とてもショッキングなドキュメンタリーですが観てよかったです。アメリカの黒人差別がなぜなくならないのか、奴隷制度を廃止した憲法13条そのものが根源であった。詳細な分析でした。

リンカーンが奴隷制度廃止を明らかにした憲法13条には抜け道があった。「犯罪者を除いて」という一文。

13条が施行されると、軽犯罪でも黒人は投獄され、罰として無償の労働に従事され、その労働者は取引された。奴隷として隷属させては違法だが、犯罪者なら合法であった。そのため大量に投獄され、黒人は危険な犯罪者であるというレッテルが貼られた。黒人を恐れた白人社会は隔離政策を求めた。

公民権運動を経て、物言う反抗する黒人はさらに危険だという印象が強まった。口答えしただけで射殺された。

犯罪者を取り締まる厳しい法律が制定された。終身刑が連発された。そこに「刑務所ビジネス」なるものが生まれ、また企業が法律制定に口を挟める仕組みもあり、大量投獄することで刑務所を運営する企業が潤った。

人数が多いため裁判は事実上不可能。無実を主張しても罪を認めれば3年実刑、裁判なら黒人が無罪になる確率は非常に低いので30年の服役は覚悟しなければならない。罪を認め3年後に出所しても前科で仕事も得られない。獄中では黒人に人権も尊厳もない。保釈金で司法取引すれば出所できるが、貧しい黒人はできない。

白人は17人に1人の割合で投獄されるが(多い!)、若い黒人の3人に1人が投獄される事実。2000年代に入って全国で200万人以上が投獄されている。一時期は奴隷人口より投獄される人数の方が多かった。

他のレビューでも書いたのですが、学校でアメリカの最も厳しい刑務所を訪問する機会がなぜだかあり、完璧なシステムが誇りでしたが、独房でさらに食事以外は拘束なので自殺者も多いと聞きました。


自由の国、努力と能力で夢を掴める国、アメリカの裏側をたっぷり見せてもらいました。夢持って自らアメリカへやって来た白人が、略奪されて連れて来られ奴隷にされた黒人の歴史を理解するのは難しい、と何人もの黒人が語りました。

リンカーンは未来のアメリカをどう描いていたのでしょうか。弁護士であったリンカーンがこんなにわかりやすい法律の抜け道を利用されるのは十分承知していたと思うのですが。
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