すずき

カーズ/クロスロードのすずきのレビュー・感想・評価

カーズ/クロスロード(2017年製作の映画)
3.1
レース界の生ける伝説・マックィーン。
だが、最新の技術を積んだ次世代車ストームの登場で、レース界は一変。
ストームは破竹の9連勝、他次世代車も次々とレースに出場し、マックィーンと同世代の車はどんどんと引退していく。
焦ったマックィーンはレース中にクラッシュしてしまう。
4ヶ月後、彼は修理が終わり、レースへの復帰を考える。
そこに思い出すのは、亡き師であるハドソンの生涯。
事故後レースから遠のいた彼の轍を踏まぬよう、打倒ストームに燃えるマックィーンだったが…

ピクサー長編アニメーション第18作。
「カーズ」シリーズの3作目で、前作と違いマックィーンが主役へと復帰、内容もレースを扱ったものへと戻る。

レースは次世代へと移り変わる中、旧世代のマックィーンが足掻くお話。
スポーツ物のシリーズ完結編として、主人公の引退と世代交代を匂わせるテーマ、最終的な着地点は嫌いじゃない。
問題はそこに至るまでの道程がズレてて、あまり面白くなかった事。

まず主人公の目的が「ストームに勝つ事」で、クライマックスのレースまでの展開が「勝つ為の特訓」なのがちょっと弱い。
そして最新技術を使ったトレーニング全否定で、自然派トレーニングだけを重視するマックィーンの老害感凄い。
さらに傷つけてしまったヒロインへの謝り方もクズ過ぎて酷い。
彼のその姿勢にお灸を据えられる展開かな、と思ったら、中盤マックィーンの更に上の世代が師匠役として登場。
根性論と非効率なスパルタ訓練で、真の老害ムーブを見せつけるッ!
まぁ、スポ根モノのトンデモ訓練、嫌いじゃないけど笑
ちょっと「ロッキー4」のロッキーとドラゴのトレーニングっぽい。

そしてやってきたレース本番。
そのクライマックスが大問題なんだよなぁ…。
マックィーンの自然派トレーニングが功をなし、最新技術に根性で勝利する、という展開だと御都合感が凄いと思っていたが、実際はさらにそれを上回る御都合展開には驚き。
よく、マラソンで選手の前に走ってる人いるじゃん?ペースメーカーだっけ。
例えるなら「ペースメーカーさんは選手の前を常に走ってるんだから、彼が選手になれば選手より良い成績残せるよね」という展開。んなわけあるか。

しかもレース途中で選手交代するという、ルール的に良いのか、と思わせる滅茶苦茶な方法。
一応カーズ世界のルールでは問題ないようだし、現実世界での耐久カーレースでも、「ドライバーの」交代は認められている。
…だったらさぁ、物語序盤のカーレースシーンとかで、選手を交代するシーンなどを挟んで、ルール的に問題ない事を視聴者に周知しておくべきじゃないか?
突然みんなが知らないルール出されても、マックィーンがルール無視のメチャクチャを言い出したようにしか思えないぞ。遊戯王かよ。
先に言ったように、「ロートルが自分の限界を認識し、自身の選手生命を犠牲にして若者にチャンスを与える」という最終着地点は綺麗に纏まってるのになぁ。勿体ない。

あと、「主人公と意見が異なる人」を不必要に悪く描く所もモヤるポイントだった。
スターリングさんはビジネスマンなので、勝ち目が薄いロマンより現実的な選択をしてしまう所はあるが、基本的にマックィーンが好きで悪い人ではなさそうだった。
けど最後の方、唐突にヘイトを溜めるような発言をする役回りに。
展開上の都合で悪者にされた彼が、ディズニー・ヴィランズ扱い(※wikipedia調べ)されるのはちょっと可哀想。