ブタブタ

ファンタズムV ザ・ファイナルのブタブタのレビュー・感想・評価

4.5
~『ファンタズムV・ザ・ファイナル』公開記念~
これは正にバトル・ホラー版『ドグラ・マグラ』
開巻、黒ベストにリボンタイのお馴染みのスタイルで主人公レジーが登場。
四連式ショットガンを手にまるでマッドマックスの様に荒野を行く場面からスタート。
愛車71年式バラクーダを駆り殺人銀球シルバースフィアとのカーチェイスと戦いが始まる。

そして何故か行きずりの美女との一夜、暖炉の前でギターの弾き語りと、およそ今の映画の演出とは思えない、まるで70年代の映画を見てる様な錯覚を起こします。

そしてトールマン、シルバースフィア、ドワーフ(小人ゾンビ)らとの戦いに突入するのですが、このレジーがトールマンに攫われたマイクを探して旅する世界を基本世界として仮に「現実」と呼ぶと、レジーが認知症患者の老人、全てが妄想として片付けられ入院している「病院」そしてトールマンにより世界が破壊されたディストピア世界「未来」この三つの世界をレジーが行き来しながらマイクとその兄ジョディ、その他のキャラクターと出会いと別れを延々と繰り返すレジーの冥府魔道・地獄めぐりの旅が描かれます。
特に「未来」を舞台にしたシチュエーションは完全に『ターミネーター』のスカイネットによって滅ぼされた未来世界そのもので、巨大シルバースフィアによる都市の破壊とばら撒かれたウィルス兵器よる人類大量虐殺、そして生き残った人類によるトールマン率いるゾンビ兵士軍との最終戦争と言った世界で、ここでも三つの世界が自在に交錯しレジーとトールマンの精神の闘争とも言うべきファンタズムの持つカフカ的な不条理かつ幻想的世界が構築されています。

ファンタズムと言えばなんと言っても殺人銀球シルバースフィア。
本作の制作もsilver sphere production!
いつもの鈎爪ドリルで脳天刺しの量産タイプは勿論、レッドメタルの針千本タイプは体当たりで人間の頭部を粉砕するし、デス・スターの如き巨大シルバースフィアはレーザーで都市を破壊します。

とにかくファンタズムの世界では人が死なない(笑)
死ぬ事は死ぬのですが劇中トールマンが語る様に「私は無限に存在する」はトールマンだけでなく他のキャラクターたちにも適用されていて死んでも簡単に生き返る。
他の次元からいくらでもやって来るのでしょう。

そして舞台は再び第1作・1979年の全ての始まりである霊園へ。
ここでも第1作でレジーを殺した(第1作でも既にレジーは1回死んでる)ブロンド女が登場。
霊園の長い廊下でのドワーフやシルバースフィアとの追いかけっこも又お約束で怖いより懐かしい気持ちになります。
「未来」で再会を果たしたマイク、美女戦士ジェーンと小人のチャンクら仲間と共にトールマンと戦うレジー。
ここでも又トールマンの死が描かれ、そして最終的にはマイク・ジョディ兄弟に看取られレジーの死も描かれるのですがそれはあくまでも一つの次元の出来事であり「未来」での戦いは続いていてレジー・マイク・ジョディのトリオによるトールマンを追う旅はつづく。

エンディングの後にも話は続き、ここでも『ファンタズム』シリーズを見続けたファンには嬉しいサプライズが。

そしてファンタズム完結と共に亡くなったトールマン役のアンガス・スクリム氏に合掌。
これ程長く同一のホラーモンスターを演じ、そして見事に完結まで演じ切った俳優は他に例がない稀有な存在だと思います。

『映画宣伝ミラクルワールド』(洋泉社)を読んで。
70年代から80年代の映画は東宝東和や日本ヘラルドの配給会社によるやたらと仰々しい宣伝が打たれてて、今は無き日劇や日比谷映画で『サスペリア』等のホラー映画がロードショー公開されていました。
自分もリアルタイムで体験した訳では無いのですが、劇中全く登場しない嘘の内容の宣伝だったり(『サランドラ』の「ザ・ジョギリショック!」とか)『ファンタズム』も「画面から飛び出すビジュラマ方式」と称して宣伝し、
コレはスタッフがドワーフのフードを着て実際に劇場に現れたり糸を張ってシルバースフィアを本当に飛ばしたりしようとしたらしいです。

小学生の時TVの「月曜ロードショー」で『ファンタズム』を見て以来30数年越しの完結。
第1作のオールキャストによる大団円(?)
でもマッドマックスのV8インターセプターの如き装甲戦闘車両に改造された71年式バラクーダに乗って3人の冒険はまだまだ続きます。
エンディングではカットされた巨大シルバースフィアとの戦闘シーン等もダイジェストで流れるのでDVDでは未使用シーンも含めた完全版を出して欲しいです。
ファンタズムは不滅!戦いは永遠に続く!
BO~Y!
ブタブタ

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