夜明け告げるポニョのうたに関しては、わりと冒頭のあたりで心のシャッターを閉じた人間です。それは、初対面から馴れ馴れしい人に出会って顔が引きつる、あの感覚によく似たものでした。
湯浅チャレンジ、初めてではないゆえ少しばかりの気持ちのゆとりはありましたが、やはり面食らいました。「夜は短し」と言いながら、なかなか夜は明けない。「歩けよ乙女」と言いながら、変なカニダンスを踊り始める。
「変な」といちいち言いはじめるならば、そりゃ全部変です。変というのは、普通ではないという意味です。そんなノリで「一体何を観ているんだろう自分は」という気分にさせられながら迎える、大団円のラスト。しかしこれが、わりかし普通なんです。別に変じゃない。なんだ、ごく普通のことをただただ回りくどく言ってるだけなのかと、気付いたとき。
急激にこの映画のことが何やら愛おしくなってきてしまいました。それは、趣味も会話も合わないだろうと思っていたユニークな子が、案外家族思いの優しい人だったと知らされる、あの感覚によく似たものでした。一体何を言ってるんだろう自分は。