アキラナウェイ

いぬやしきのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

いぬやしき(2018年製作の映画)
3.6
インフィニティ・ウォーの公開日!
でも!
僕はいぬやしきで行く!

宇宙人により全身を機械化された初老のサラリーマン犬屋敷壱郎(木梨憲武)と高校生獅子神皓(ヒロ/佐藤健)との闘いを描く。

VFX技術では、ハリウッド映画と肩を並べられるレベル。身体の各部位のトランスフォーミング、犬屋敷と獅子神の高速空中チェイスは見応えがあり、アイアンマンのそれと遜色はないと言える(日本人の贔屓目かな?)。

そして何より主演2人の功績が大きい。

我らがノリさんは、白髪混じりの頭、顔の皺、身体の斑点状のシミとどこから見ても犬屋敷その人。演技も上手い。佐藤健演じる獅子神はクールな眼差しと冷酷な話し口調で、ルックスも恐らく佐藤健史上最も美しい。

単なるSFアクションに終始するのではなく、ヒューマンドラマとしても秀逸。

先ずは犬屋敷の日常。妻が発する言葉には愛情の欠片もなく、高校生の娘、中学生の息子からも疎まれ、職場では年下の上司に叱られる日々。しかし、妻は投資詐欺に引っかかるし、娘が通う高校ではイジメが常態化しているし、息子は学校でカツアゲされている。この日本ならではの閉塞感!誰も救われていない状況がリアル。

この鬱々とした日本独自の陰湿さが描かれているからこそ、超人化した犬屋敷が光る。

家族も護れない。
何も出来ない。
それでも…。
僕だってやれるんだ。
誰かを救えるんだ。

誰かを救う事に存在意義を見出していく犬屋敷。

反面獅子神も根っからの悪人ではなく、離婚後女手一つで育ててくれた母(斉藤由貴)の事を大事にしている心優しい一面がある。しかし、獅子神の場合は無関係な人間の命を奪う事で存在意義を見出していく。

初老のサラリーマンと高校生。
老いと若さ。
救う事と殺す事。

この対比が素晴らしい。犬屋敷がヒーローとしては不恰好でも、獅子神はダークヒーローとしてカッコイイ。一粒で二度美味しい!

二階堂ふみのウィッグが似合わなさ過ぎた事と、伊勢谷友介があまりに活躍しない事が気になった程度で、漫画実写化としては成功と言えるのではないだろうか(原作読んでませんけど)。

あー、それでもインフィニティ・ウォーのインパクトには到底敵わないだろうなぁ…。