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クルエラのRのネタバレレビュー・内容・結末

クルエラ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2021年のアメリカの作品。

監督は「ラースと、その彼女」のクレイグ・ギレスピー。

あらすじ

類い稀なファッションの才能を持つエステラ・ミラー(エマ・ストーン「哀れなる者たち」)は仲間のジャスパー(ジョエル・フライ「クリスマスとよばれた男の子」)とホーレス(ポール・ウォルター・ハウザー「オリオンと暗闇」)と泥棒を働きながらファッションスキルを磨いていた。そんなある日、百貨店のアルバイトでエステラがショーウィンドウのマネキンの衣装デザインを作り直したところ、オートクチュールデザイナーのバロネス(エマ・トンプソン「きっと、それは愛じゃない」)に気に入られ、スカウトされ、彼女のもとで働くことになる。しかし、そのバロネスが亡き母の死の原因になった「ある出来事」に関わっていることを知ったエステラは仲間たちと共に復讐を開始する!!

公開時からそれなりに気になっていて、ようやく配信で鑑賞。

お話はあらすじの通り、ご存知「101匹わんちゃん」のメインヴィランであるクルエラ・ド・ヴィル単体を扱った、つまりスピンオフに当たる内容となっている。

クルエラというと、もちろんディズニー版のガリガリにやせ細った骸骨みたいなヒステリックババアのクルエラももちろん記憶に刻まれているが、やはりなんといっても実写版でクルエラを演じたアカデミー女優で、演技派のグレン・クローズが印象深い。

個人的にアニメよりもこの実写版の方が何度も観ていて、まだこの頃はこのグレン・クローズという女優さんが演技派でアカデミーに何度もノミネートされる大女優だということも知らなかったこともあり、後々それを知って、じゃあこの時に演じたクルエラの終盤における「汚れ仕事」はグレン・クローズファンにとってはかなり衝撃的だったんだろうなぁ、こういう子ども向け作品の役でも決して手を抜かずに全力している点も踏まえて偉大な女優さんなんだなぁと思ったり。

で、そんなグレン・クローズ版よりも遥かに若い今作のクルエラを演じたのはこちらも若き演技派エマ・ストーン。今年公開された「哀れなるものたち」含めて、中堅どころの女優の中でも頭ひとつ抜きん出ている印象があるが、やはり今作のクルエラも気だるげな感じだったり、別の作品ではキュートに映るその大きな瞳の眼光鋭さもあってまさにハマり役!!

加えて、今作ではファッション映画としての趣向も凝らされており、クルエラが身に纏うその奇抜な服装の数々も一つ一つがめちゃくちゃイイ!!やはり舞台がイギリスだからか格式高い服装も出てきたりもするんだけど、個人的には序盤のUKパンクとモードを掛け合わせたような彼女のキャラクターを全面に押し出したファッションがすごくエキセントリックで良かったなぁ(金があったら真似したい!!)。

あと、そんな彼女の子ども時代を演じたティッパー・ザイフェルト=クリーブランドちゃんというすごい名前の子役の子もすごくキュートで良かった。

あと、今作でもディズニー版でクルエラの手下だったジャスパーとホーレスが出てくるんだけど、見た目の凸凹感も上手く表現されてて、なおかつ小悪党というよりかは後半にかけて復讐一直線に走り、どんどんヴィラン化していくエステラの姿に戸惑う「良心」的なポジションも兼ねており、意外に重要なポジションだった。加えてジャスパー役の人は知らないんだけど、ホーレス役が調べて驚いたんだけど、あのポール・ウォルター・ハウザーが演じているんだな!!宇多丸さんが一時期ハウザー、ハウザー言ってて気になってた俳優だったんだけど、恥ずかしながら今まで出演作を観たことがなくて、今作で初めてその演技を見たんだけど、成程確かに印象的であり、存在感も抜群!他の出演作も観たくなった!!

あと、そんなホーレスの愛犬ウィンクもアイパッチをつけたチワワというルックもあってめちゃくちゃ可愛かったなぁ…!!

で、お話的にはエステラがいかにして稀代の悪党「クルエラ」になったのかを描く「ビギニングもの」であると同時に、亡き母の仇として今作オリジナルのこちらも演技派エマ・トンプソン演じるバロネスを悪役に置い「復讐もの」としての側面も強い。

また、このバロネスというキャラクターが「プラダを着た悪魔」のミランダ編集長を彷彿とさせるような「カリスマ的絶対的権力者」として描くことで、オリジナルではヴィランだったクルエラを「アンチヒーロー」的に描いていて、これがまた「勧善懲悪もの」としても観れてわかりやすく面白い。

で、上述したように今作「ファッション」映画でもあるので、バロネスに対する「復讐」もファッションを絡めたもので独特。

特にバロネスにスカウトされた駆け出しの頃はまだ赤髪のウィッグを被ってトレードマークの髪を隠して「エステラ=仮の姿」を演じているんだけど、バロネス主催のパーティに初めて「クルエラ」として本来の姿でバロネスの前に現れた時のシーンが強烈!!

参加者全員がパーティーのテーマである「白と黒」をテーマにした衣装で参加することを義務付けられているパーティーで、エステラも白無垢姿で現れるんだけど、着いて早々「火を貸して」の一言でその衣装に火を放つとたちまちテーマに合わない奇抜な赤のドレスが現れ、ただその髪はパーティーのトーンにマッチし過ぎている白と黒アシメのトレードマークの髪型で初めて公の場で姿を表す、そのカタルシス!!痺れるっ!!

その後もバロネスに対抗するように「ロンドン・ガラ」というファッションイベントで顔に「Future」とペイントして、バイクスーツをモチーフにした奇抜なファッション、別のパーティーでは革命家と女王ファッションの合わせ技みたいなファッション、また別のパーティーではゴミ収集車から颯爽と現れて、下着と新聞のハギレを組み合わせた(ちょっと片翼の天使感もある)、だけどめっちゃゴージャスなドレス、そして極め付けは皮肉にも「ダルメシアン」ファッション!!を披露するなど、ことあるごとに「クルエラブランド」でその姿を現してはバロネスブランドを矮小化させ、ファッション業界を席巻していく!!

で、その過程でクルエラに対抗するため、エステラがデザインした案を自分のデザインとして奪い取って切り札のドレスをデザインしてバロネスが対抗しようとするんだけど、ゴールドでゴージャスな独特のデザインのそのドレスが実は…な顛末も非常に性格悪くて良いね〜👍!!

で、途中、怒り心頭のバロネスによって窮地に追いやられてクルエラとしては表舞台から消えることになるんだけど、クライマックス、母が亡くなったきっかけとなったバロネスのお屋敷でのパーティーで仇であるバロネスを本当の意味で「殺す」のではなく、社会的に「抹殺」する道を選んだところも彼女の「気高さ」みたいなものも感じられて良かった。

ただ、それによって「エステラ」は死に「クルエラ」として生きることになったわけで、やはり周り回って、ちゃんとクルエラビギニングとしての見事な着地にもなってて、やっぱクレイグ・ギレスビー腕あるなぁ!!

ラストもちゃんと「101匹」に繋がる布石も入れ込んでて「なるほど!そこに繋がってくるのかぁー!!」と感心しちゃうくらい最後まで抜かりない!!いや、これは近年乱立するらディズニー実写化作品としても、そのスピンオフにしても、かなり上位に位置する傑作と言って良いのでは?

そんな感じで個人的にファッション欲をグイグイ満たしてくれるお気に入りの作品となりました!!
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