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ヤコペッティの 残酷大陸のnanaのレビュー・感想・評価

ヤコペッティの 残酷大陸(1971年製作の映画)
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モンド映画の巨匠、グァルティエロ・ヤコペッティが手掛けた劇映画。
アメリカの奴隷制度をテーマに、「現代に生きる取材班(ヤコペッティ)が奴隷制度時代にタイムスリップし、現地の取材をする」というドキュメンタリータッチの物語です。
映し出される奴隷制度の残虐性とは裏腹に、リズ・オルトラーニの美しい音楽が印象的です。
奴隷役として数百人規模のエキストラが出演しています。

信じられないような残酷なシーンが続きますが、それらは全て調査に基づくもので、当時実際に行われていたことだそう。

印象的なシーンとして、「黒人は脳が小さく知能がないので奴隷にしやすい」という独自の学説を披露する優生学の博士が出てきますが、インタビュアーが彼に自身の人種を訪ねると「私はユダヤ系だ」と答えるという、皮肉にも程がある場面まであります。

今作で暴かれる、かつてアメリカの白人が犯した極悪非道の数々。
しかし、もし自分が当時のアメリカにいて、白人だったら、どのような行いをしたかは常に考えなければいけないと思います。
当時あの状況下で「人種差別は良くない、やめよう」なんて言えるのか。
自分だって今作で描かれるようなことをするのではないか。
人間の奥底にある残酷さは、いつの時代も忘れてはいけないと思います。

今作は過去の話であって、過去の話ではありません。
人種差別問題が現代は解決した、とは全く言えない状況なのです。
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