十一

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルの十一のレビュー・感想・評価

4.2
同情を誘うにはあまりに下劣だが、憎悪するには愚劣に過ぎる。この悲劇にすら辿り着けない感情。顧みられることのない凡庸さの呪いを受けてなお、自身の人生は唯一の本物でしかありえないという残酷な真実。大勢の普通の人が抱きながら、ありきたりであるが故に語られてこなかった感情。これこそが悲しみだ。成功の物語が消費される一方で累々と積み上げられた、取るに足りない物語達の憤り。同情はできないし、軽蔑するほどの価値もない。だが、その無意味な愚かさと日々戦い続ける力には、信じるに値する本物の輝きがある。人類の栄光や偉大さではなく、日常を戦わねばならぬ人々こそがファイターなのだ。
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