butasu

ピーターラビットのbutasuのレビュー・感想・評価

ピーターラビット(2018年製作の映画)
3.0
めちゃくちゃ面白かった。ただ、喉に何かが詰まったような不快感も残る何とも言えない映画でもあったので少しだけ減点。

こんなに可愛らしいビジュアルなのに、全世界で愛されているキャラクターなのに、内容が全く子供向けではない。ウサギと人間の、ガチの殺し合いバトル。人間/マクレガーの方は電流や爆薬などいわゆる害獣駆除の手法を使うが、ウサギ/ピーターラビットの方はなかなかのやり手。度重なるじわじわとした嫌がらせはウサギ目線なら痛快だが、人間目線だとノイローゼになるレベルでしんどい。アナフィラキシーショックまで狙ってくるのだから。ここを楽しめるかどうかが分かれ目な気がするなぁ。テンポ良く次々と繰り出されるウサギの嫌がらせにゲラゲラ笑いつつも、同時にほんの少しだけ不快感も感じてしまった。でもとにかくコメディセンスが抜群なので、基本的にはものすごく楽しんで観ることが出来た。全然休み無く笑えるシーンが続くので、細かいことは考えずに済む感じ。「対決シーンはプライベート・ライアンを参考に作られた」という情報を後から知ってまた笑ってしまった。

ウサギたち全員のキャラが非常に立っていて、全員が憎めなくて愛らしい。90分ちょっとの映画でここまで全員の個性をはっきりさせるのは本当にすごいと思う。脚本がしっかりしている。だから会話はずっとキレッキレでひたすら面白い。全員有能で足手まといがいないのも良きポイント。キャラデザもCGもモフモフで、動きも可愛らしくてユーモラスで完璧。何回か出てくるおでこを合わせてゴメンねのシーンは、全て可愛らしすぎて胸が震える。全編に渡る音楽の使い方も最高。そして神経質な男性を演じたドーナル・グリーソンも素晴らしかった。ウサギ相手の戦争は実際の撮影時はもちろん一人芝居になるわけで、あそこまではっちゃけた演技を一人でやりきったのは本当に見事と言うしかない。

ただ、ウサギたちの憧れ、隣人の女性ビアはちょっと飲み込みづらいキャラだった。「庭をウサギに開放してあげて」なんて確かにウサギ目線で見れば聖母のような女性なのだが、作物を食い荒らされる隣人サイドからしたらあまりに無責任。動物愛護の精神は好きにしたら良いが、自分が飼うでもなく、気が向いたときに構うだけというのはどうなのか。挙げ句にはちょっと自分の絵にイタズラをされたというだけで激怒してウサギを閉め出す。ちょっとあまりに自分勝手すぎやしないか。

かなり面白かったし人に勧めたい作品なのだが、どうにも好きになれない細かい不快感がジワっと残る、何とも言えない後味の映画だった。
butasu

butasu