TakashiNishimura

ピーターラビットのTakashiNishimuraのレビュー・感想・評価

ピーターラビット(2018年製作の映画)
4.2
98年に湖水地方で仕事をしたとき、ウィンダミア湖畔の古いホテルに宿泊した。石造りの家が連なるニア・ソーリーにも行った。昔ながらの牧場で飼育されるハードウィックも見た。別にポターの足跡を辿る仕事だったワケではないしウサギとも出会わなかったが、他にもアルズウォーター湖をはじめあちこち行った。そして、湖水地方とは何だかテーマ・パークみたいな所だなと思った。世界に冠たる大英帝国華やかなりし120年前に時計を止めたナショナル・トラストによって、“イギリスの原風景”“イギリス人の心の故郷”ということにしちゃったワケだからそう感じるのは当たり前なのだが、そんな湖水地方のテーマパーク化に一役買っているのがピーターラビットだった。

だが、本作におけるピーターラビットには、そんなクラシカルな古き良き時代の香りは殆ど無い。

ロンドンからやって来たウサギ嫌いの男と死闘を繰り広げ、“いたずら”などというレベルを超越した攻撃を仕掛ける。質実剛健な暮らしを賞賛するようなメッセージも無ければ、息をのむ美しい原風景が映し出されるワケでもない。スズメはラップを歌うし、ひたすら痛快かつシニカルかつジェットコースターなエンターテインメント。だが、それでいて原作の底流に流れる精神はしっかり押さえられている。海外では「原作を愛する人たちを激怒させる可能性はじゅうぶんある」などと批評されているようだが、ハッキリ言ってかなり面白い。ラスト、もうひと山欲しい気もするが、それでもじゅうぶん面白い。

98年の湖水地方での仕事が終わった後、帰国のフライトを翌日に控え、スタッフ一同ロンドンのハロッズに繰り出した。その時、両膝に穴の空いたジーンズを履いていた私だけが入り口で入店拒否された怨みはまだ忘れていないが、そのハロッズ内でドタバタが繰り広げられる様は痛快だった。