まさ

許された子どもたちのまさのレビュー・感想・評価

許された子どもたち(2019年製作の映画)
3.7
いじめの末に同級生の命を奪った中学生、絆星(きら)。彼を中心に据えながら、いじめといじめに関わる人々と社会の歪みをあぶり出していく。自供した我が子への否認の説得に加え、自らも偽証に及ぶ母。現実への関わりを避ける父。追従する友人に、いじめのターゲットとして追従させられている者。学校の描かれ方はもっと辛辣。陰湿ないじめ、傍観するだけのクラス、形式だけの話し合い。震源地たる現場では、皆現実に向き合わず、目をつぶり、ただ受け流していくばかり。一方、現場と距離を置く世間やマスコミは、自らが裁きを与え得る者かのように、正当化然として暴力的な発信を繰り返していく。どちらも実に無責任。そんな無責任な社会の中で、絆星自身がそうであるように、解決されない痛みや悲しみはますます増幅し、加害の源泉になり、闇は深まる。緊張感を持たせた露悪的な現実描写が、我々を引き込んでいく。後味は決して良いとは言えないが、社会の闇に、そして自らの無責任に直面させる、実に考えさせられる作品。
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