Kumonohate

三度目の殺人のKumonohateのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.0
今は昔、ディレクターとして取材番組を手がけていた頃から、ずっと感じていることがある。すなわち、事実を積み重ねることで、その核心には「真実」なるものが透けて見えるハズで、確かに、取材を深めてゆけば、その姿形はぼんやりと浮かび上がってくる。だが、そこから先、「真実」なるものがクリアな像を結ぶことは無い。むしろ、その実像に迫ろうとすればするほど、輪郭がブレてくる。

おそらく、「真実」とはそういうモノ。光の当て方によって玉虫色に変化する。そして、当事者にすら正確な形や色はわからない。いや、そもそも、固定された色や形など無いぼんやりしたモノなのだ。だから、本作における福山雅治演じる弁護士の「真実なんて誰にもわからないから、依頼人にメリットのある結論を導き出すことを最優先する」というスタンスには納得できる。「法廷は真実を明らかにする場では無い」という、本作がテーマに据えているテーゼも当然だと思う。そんなハナシが、是枝監督の巧みな脚本&演出や役所広司の見事な芝居をメインに展開する。

それってどうなの?という日本の司法のあり方を抉り出すだけでなく、そもそも真実とは何か?果たして真実なんてものは存在するのか?という根源的なテーマを問いかける本作。普遍的な価値を持つ良作だと思う。

以下余談。現実世界の斉藤由貴と劇中の斉藤由貴に妙な連関を感じてしまうのは全くの偶然。
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