Kuuta

三度目の殺人のKuutaのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.5
「真実の行方」に似てると思った。あっちは戯画化された「オチ」に萎えてしまったけれど。勝利至上主義の弁護士の顛末なんかそっくりです。

是枝監督初の法廷もの。専門用語が飛び交う会話をいかにいつもの自然さで描くのか注目してましたが、ちょっと引っかかる感じでした。「法律って難しい」「訴訟経済って…」。序盤の会話やこの辺のセリフは説明感が拭えず浮いてた気がします。
「海よりもまだ深く」の見事な団地描写から比べると、弁護士事務所も法廷もテレビドラマ感ありありで、磨ける要素があるのではと思いました。牛丼は美味そうでした。

断片的な情報から解釈する=映画観賞やこうした感想自体が作品を自分の器にしている、というメタ視点も成り立つと思いました。三隅を裁く=分かったと思い込む、自分を投影する。

接見の緊張感や何度も出てくる十字架、カナリア(不条理の被害者、炭鉱夫)の見せ方は良かったです。監督のルーツであるドキュメンタリーチックな雰囲気も悪くない。法廷ものとしては「利害調整の場である」以上の描写がないので評価のしようが無いです。

家族絡みの描写はさすがの安定感ですが、重盛が事件に入れ込むようになる過程、三隅との関係逆転の面白さがいまいち伝わってこなかった。事件が自分の関心とリンクしてきたから、「蟹なら行くけど蛸なら嫌」という話?

演出はうまいけれど、何かの答えを描こうとしている感じはしない。スター映画としての3人の映りっぷりはバッチリだったと思います。基本は動機を巡る会話劇なので舞台化も向いてそう。70点。
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