エンポリオ

Ink(原題)のエンポリオのネタバレレビュー・内容・結末

Ink(原題)(2009年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

100分に凝縮された人間の強さと弱さの物語。
鑑賞前の期待値がそれほど高くなかったからこそ尚更度肝を抜かれてしまった。詳しい事情は知る由も無いがこれ程までに素晴らしい作品がフィルマークスのレベルで全然知られていないということに驚きを隠せない。
物語の作りとしては、描かれる空間も時間軸も立ち替わり入れ替わる忙しいSFファンタジーといった感じ。色々なところに色々なタイミングでヒントが散らされていくので、中枢に辿り着くまでになかなかの苦労が要る。どれだけ鋭い人であったとしても途中で飽きてしまうようなものではなかったように感じる。
幾つかの世界を跨いで描かれているにも関わらずストーリー性がしっかりと保持されているため、置いてきぼりを食らいながらも必死について行けば後半に辻褄が合っていく。
人間の心情を描く上での正攻法ではないし、観る人が観れば「逃げ」とも言われかねないやり方だったが、それでこそこの作品の魅力を十二分に発揮出来ていたように思える。
虚飾や虚栄に揺さぶられながらも本当に自分を成しているものを捕まえたら、誰にも奪われないように決して離さない。そこに辿り着くための術が様々に描かれているので多少見辛く感じてしまう部分もあるが、個人的にとても強く印象に残った実験的な作品だった。
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