えむA

ヒトラーに屈しなかった国王のえむAのレビュー・感想・評価

3.5
おそらくわが国の世界史の教科書では、一行にも満たない記述であろう第二次世界大戦のノルウェー侵攻。イギリスに亡命政権があったぐらいの知識しかなかったので、初めて知ることばかりで実に興味深かった。

国民投票で選ばれて迎えられた国王としての矜持、立憲君主制のもとでの国王としての矩を超えまいと極めて抑制的でありながら、国難有事の際に決断を迫られるホーコン7世の苦悩がひしひしと伝わってくる。ドイツ公使に対峙する彼はかっこよかったが、超人的でなくとことん揺れ動き、人間臭い人物として描かれている。

誰だか忘れたが『戦争』の反対は『平和』ではなく『外交』であると言った人がいたが、この映画の中で国王に妥協を迫るドイツ公使も彼なりの正しさを自らの役割の中で懸命に果たそうとしていたのだろう。

映画では大戦終結まで一挙に跳んだが、国王の決断を精神的支柱にして反ナチスの抵抗運動を繰り広げ多くの血が流れた。ナチスに屈しなかった国王を戴いたことにノルウェー国民の矜持があったのだろうと思う。
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