川田章吾

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたの川田章吾のレビュー・感想・評価

3.4
そうなんだよ、当事者は一人の人間として普通に暮らしたいのに、そこに「障害」とか「戦災」とかで「英雄」へ記号化されてしまうと、本人の意図とは違う方向に物事は進んでしまう。
リップマンは、「人は物事を見てから定義すると考えているが、実際は定義してから見る」というふうに言っていたが、この映画を見ると言い得て妙だなと思った。

ただ、作品全体の構造があかん。前半は良かったのだが、後半から見事に失速。
それは、うざったいお母さん役をうまく使いきれていないため、障害がなく主人公ジェフの葛藤がうまく描かれていない。

後半からは英雄視されることを抱えきれなくなってジェフは自爆。自分の妻にも八つ当たりで見放される。そこまでは良いのだが、最後にあのお母さんが望む始球式でゴールを迎えちゃダメでしょ。
そこまで積み上げてきたんだから、英雄視されることを克服し、エディプスコンプレックスのシンボルである野球場の呪縛を克服しないとダメでしょ。

伏線の張り方も良くないし、脚本でガッカリ。しかし、主人公ジェフ役のジェイク・ジレンホールの演技には脱帽。流石です!
川田章吾

川田章吾