床ずれ

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーの床ずれのレビュー・感想・評価

3.0
前に付き合っていた彼女の部屋でも頻繁にラップ音やポルターガイスト現象に近いものが起きていた。もしかしたら元カノの元カレの亡霊だったのかもしれない。

それなりに感動はしたが、はっきり言って退屈だった。それは、この映画のわざとらしい長回しが、あくまでもストーリー先行にあるからかもしれない。
どうしてもアピチャッポンや蔡明亮などの素晴らしい長回しと比較せざるを得ないのだが、彼らの長回しが、持続するショットの最中にも、ストーリーとは直接関係のないところで生起する様々な動きによって、刻々と生成変化するこの世界に対する喜びに満ちているからだろう。
それに対し、本作の長回しは、あくまでストーリーが先に来ているので、ストーリーとは直接関係のないところで生起している運動を見つけても、それらはあまり重要視されないし、大して魅力的でもない。それがとてももったいなくてしょうがないと思った。
この勿体無さは、森田芳光の『それから』を見た時に感じた苛立たしさにも似ている。長回しであることの必然性が見当たらないのだ。この類いの長回しは、倍速で見たとしても映画経験として何ら毀損するものはない。
それから肝心のストーリーも、手塚治虫が『火の鳥』でやっていたようなことの二番煎じ感があって、特に驚くべきことがなかった。わかったような口でご高説を垂れる若ハゲにもイライラ。そんな抽象的なことばかり言っていないで、いまここで刻々と生起している運動を愛せよと言いたい。とはいえ、もしかしたらそれがこの映画の伝えたい本当のメッセージなのかもしれないが。

ひとつ面白かったのは、ゴーストの白い布に反射して映る様々な色合いの光が面白かった。それを、映画の白いスクリーンであると拡大解釈しても良いかもしれないが、なんだか凡庸な発想なのでやめとく。
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