床ずれ

愛のまなざしをの床ずれのレビュー・感想・評価

愛のまなざしを(2020年製作の映画)
4.0
万田邦敏は「空間の詩人」だということがよく分かった。
精神医学を主題とした映画だが、『夜明けのすべて』が「ガチ」な映画だったとすれば、この映画はあまりにも作り物めいていて、キッチュで悪趣味だ。
まず、普通の精神科の診察室は階段で下に続くような作りになっていない。
それから、主人公の飲む精神安定剤も、シートではなく謎の容器に入れられていて、まるでサプリメントか何かのようである。
そして最大の過ちだが、精神疾患は完治しない。寛解するだけであって治療は一生続いていく。
万田は精神医学に無知であるだけでなく、わざと現在の精神医療とは異なる空間を設定しているようでもある。
そしてこうした現在の精神医療とは異なる空間こそが、この映画の最大の魅力でもある。

このキッチュさは、吉田喜重の映画を彷彿する。特に、『告白的女優論』で精神分析の治療を受ける岡田茉莉子の部屋にあったあの階段を彷彿する。
そして、ラストの包丁は、『エロス+虐殺』のラストみたいでもある。同じアクションを繰り返し反復して、殺意は誰にあったのか、その真偽が闇の中へ葬られる感覚。
作り物だとは分かっていても、ずっとゾクゾクしながら見た。
床ずれ

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