わかま

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのわかまのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます


淡々と詠まれる詩を眺めているような映画だった
めちゃめちゃすきだった

涙腺のゆるさに定評のあるわたしだけど、なんの感情なのかよくわからない涙が出てきて、ただ心臓がぎゅっとした


置いていくのではなく、置いていかれるゴーストのはなし

わたしはいつも誰かが亡くなると「おいてかれちゃった」と漠然と感じて、なぜかいつも悲しいとか寂しい以上に「酷い」「ずるい」という気持ちがあって、それは亡くなった人たちがわたしたちの今いる世界のしがらみから離れて、悲しいとか寂しいとか、そんなやり場のない切なさなんてない世界にいけるからだと考えていたからだと思う

宗教観とかスピリチュアルな話じゃなくて、わたしは悲しいとか寂しいとか、嬉しいとか幸せだとか、そういう感情を感じられるのは生きている人の特権だと思っている節があるようで

でもこの映画は、「置いていく者」と「置いていかれる者」の立ち位置が全く逆で、ゴーストがその場所、人に囚われて、動けなくなってしまっていた

生きている人は立ち止まることも一歩進むことも選べるけれど、死んでしまった人はもうそこから何も選択することはできなくて、ただ愛しい日々の記憶だけを頼りに存在することだけを許されていて、そこに置いていかれるのは、この世界に置いていかれるわたしたちよりもずっと悲しくて寂しいことなのだと思った

内容も映画の表現も人を選ぶし、少し寝不足だったら寝てしまうかもしれないけれど、わたしにとって死生観を考え直すきっかけになった映画だった

最初にも書いたけど、ほんままじで詩や絵本をめくっていくような映画
ひとつの視点から長くカメラを回す表現が多く使われてるので、映像でさえも、わたしはこの長い長い物語の挿絵でしかないんだなぁと思ったんご

最小限のセリフしかない中で、言葉を発しないゴーストにこんなに感情移入できるのは、やっぱり音楽が最&高だからだと思う


誰を待っているのか、わからなくなるような、途方も無い年月をただ過ごして、ただ過ごして、待ち続けるあのゴーストを抱きしめたくてたまらんかった

置いていかれたくないし、置いていきたくないよ


絶対みんな「いつまでパイ食べるん?」って感じて「そんなにパイ食べて大丈夫?」って心配になると思う「えっ木下ゆうか系女子ー?」ってなるくらいにはパイを食べるまじでパイ食べる
わかま

わかま