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ワイルドライフのslvのレビュー・感想・評価

ワイルドライフ(2018年製作の映画)
4.3
ポール・ダノが好きなので、彼の初監督作と聞いて凄く楽しみにしていた作品。

だけど、こんなにもシリアスなストーリーだったとは…。
原作のある作品だけど、これはダノ自身の記憶と心情を投影した物語だと知って、さらにしみじみ切なく響いた…。

少し前に観た『メモリーズ・オブ・サマー』と重なる作品だった。

どちらも主人公はまだ10代前半の、大人になりきれていない少年だというところも共通していて、そんなまだ幼さのある彼らの気持ちを想像するにあまりにも健気でいたたまれなくて、胸が張り裂けそうな苦しさを感じてしまった。

父を演じたジェイク・ギレンホールと母役のキャリー・マリガン、どちらの演技もさすがの凄みと説得力があり真摯に胸を打つ。
そして、息子ジョー役のエド・オクセンボールドの控えめ且つ繊細な演技がとにかく素晴らしかった。
どこかポール・ダノに似ている表情や佇まいも凄く良かった。

仕事に対しての頑なな父のプライド。

生きるために強くならなくてはいけなかった母の逞しさ。

どちらが悪い訳ではないし、それぞれの行動や心情も凄くわかる気がした。

母ジャネットは妻と息子を置き去りにして遠くに行ってしまった夫が許せなかったのだろう。

だけど父ジェリーが、山火事のニュースを目にして居てもたってもいられない気持ちになったことは、私は理解出来る気がする。
そこには、今いる場所から少しの間離れたいという、現実逃避な部分もあったことは否めない気がするけれど。。

それにしても、母ジャネットは大胆すぎないか?
悪びれずに息子の前で堂々と変容していくような母の姿はちょっと理解に苦しんだ。。

それでも母に反抗することもなく、じっと耐えるジョーの姿に母への愛の深さを感じてとても切ない。

ジョーは、どれだけ初雪が待ち遠しかったことか。

なのに、初雪が降り、待ち侘びていた父の帰宅が更なる地獄を迎えるとは…。
その修羅場に一瞬、驚愕。

終盤には、この作品のポスターになっているシーンが描かれていて、そこでたまらず涙腺崩壊…。

苦しくもがいた日々を乗り越えて、静かな気持ちで今の家族の姿を受け入れられるジョーが、とても大人に見えた。

ポール・ダノは監督としても素晴らしいね。
凄く好きな作品でした。
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