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トルチュ島の遭難者のニューランドのレビュー・感想・評価

トルチュ島の遭難者(1976年製作の映画)
4.4
✔️『トルテュ島の遭難者たち』(4.4) 及び『アデューフィリピーヌ』(4.2)▶️▶️

 『トルテュ~』を初めて観たのは1992年くらいだったが、平日で仕事帰りに駆けつけたので後半しか観れなかった。二本立ての後の『メーヌ~』は全編観れて、歓喜乱舞したが、本作は半分だけ、しかも画質のよくないビデオ版だったので、あまり…という感じだったが、二本とも観れた勤めの縛りない自由人の多い知人らは口々に『トルチュ島~』最高によかったろ、と同意を求めてきた。
 本作の真価は数年経ってのフィルム上映で思い知る。複数本が並ぶロジェの最高傑作=映画史の頂点と思い知らされる。頂点を極めた最初の作『新学期』から、ヴァカンスの至福・高揚ものとして括られがちなロジェ作品だが、作品間隔がうんと空き、それぞれに全く違う色合い・感銘だ。本作には、作品をリードするスタイル・先見と云ったものがなく、内心も外界・その手触り・全て後に残る疲労感を同等均質に描いてく。しかし瞬間を通俗一般も最適のカットを逐次選び連ねて行くことで、主題歌?にもある、悪意と幻想だけが彰かにされてく現実の、感触の得難い価値を迷わず蓄積させて、結果阿保らしくも心地云い手応えを確認することになる。
 数多くの登場人物も、新しい場への移行も、紹介や契機を押さえる事なく、いつしか既に、という感じで、語りものにあるまじき興味を喚起させてかない進行だ。民族音楽らも多くなく、あくまで劇中での現実の余興演奏の伝わり。ここでは囲い込みのない、オープンな興味に応える図が現れたりするも、それから何かが構築されたり、限定されたりする事はない。手持ち感覚の室内移動が主調を作り、カットも都度オープンだがスタイルや意図を持たずに押さえられてゆき、リズムや流れを作る事なく散りばめられてゆく。美しさや力強さも偶々で、波面の捉えの重なり、かなりの距離の自由な歩きフォローや、帆の動き捉えや視界の拡がりと動きのダイナミズム内包、夕景や夜間の動きもいつになく美しい伸びは感じられるが、感覚からのテーマには発展しない。即物性が残り続ける。森や滝への接近の手応え・雄大さもそうだ。カットの角度取りと対応も、敢えてという以上に平均的だ。
 そもそもカット積みばかりか、展開もスリリングな危なさや切り抜け感も置いてけぼりだ。冒頭の文学的始まりや、中盤の唐突な「広報アシスタント」の以下行為の説明の字幕も、何ももたらさず、彼女の文章の肉声化もそうだ。
 最初の日常も高級無限イメージでの、妻への面当ての架空の恋人作り、それが近場の実在名で妻の動きだし、その先手で本人に会うと黒人、距離等端からある筈が、向こうのモーションでねんごろに、妻からの電話とベッドの女への弁解から、墓穴堀り止まらず。これも悪運予兆として繋がるわけでなく、すっきり、仕事場へいる、更に情事相手も同席、意味深な歌詞の歌手のクラブに同僚と行ってる場へ既に。同僚の提唱、仕事の旅行代理店の企画定型パックと離れた、ロビンソンクルーソー再現の、全て現地調達・選択の立ち上げれた、ツアーのサバイバルプランの、認可1人歩き。が、見切り発車へ提唱本人は来ず、海軍で港のコックをやってた、どこまで役立つか、の弟が代理。全体を指揮する者いるとの提唱者働かず、半テスト一発目へ、適当募集で来た10人くらいを引っ張っての、無人島に行き着き、そこで一ヶ月の滞在・生存闘争似プランが実行されてく。
 同僚弟が機内から連れ来たは、偶々中で出会った1人だけ、が、路線バスを口説いての出発時には既に何人かフル揃ってる。男女半々ずつくらいで、ベタベタも仲違いに転じるカップル、本格ダイバーの別目的、らがいて、徐々にしか中身がわかってこない、反ドラマか欠落重要「準備」侭の進行。バスから密林・滝を抜け、これも安い民間観光船の船長を口説いたのへ、直ぐ乗れる、と相変わらず引っ掛かり飛ばして見かけスイスイ。用立て面白め活動はスッ飛ばされ、呼応してく応募客のモチベーションや活力密度の無さ・低さが、先立つ。風景だけが荒々しく掻き立てそうで、しかしそのまま、島を間近に、泳いでくか、小舟を推奨の主人公に、誰も反応は薄い。何となく信頼ある同僚弟と、「広報」請負娘が、小舟と樽に思いきって乗り、やっと着岸も、島周り急流で、誰もが続かず無気力傍観。カラ元気が失われず、客らの持ち物を海に捨て、クルーソーに遮二無二持ってかんしてる(ダイバーや同僚弟が自分等の流れで回収)、ツアー引率者が皆を煽るか見放しで、着衣で飛び込むも着いた様子無し。島の二人は、主人公捜しと遠くには少しは何かと、夜間に島の反対側に向かう。危険と恐怖の乗り越えで、引率者の上陸の徴は見つけるも、海上の船は消えてた。が、歩くうち、建物遠景認めから、会った街へのトロッコに乗っている。街でメンバーと再会、投錨に失敗、流されて責任問われなくそのままの船長と、分かれ漁師船に拾われたのだ。主人公は、バナナを栽培物と知らず大量食って獄中。
 島に先行で着いた三人と提唱同僚は、解雇も、今回のプランを発展させた新小会社をスタート。しかし変わらず勝手空回りで行く末知らず。
 タッチも、構成も、展開も、説明も、事業計画の失敗成功に拘わらず、有機的にも、逆説的にも、繋がらず、発展や理解の進みなく、只、ランダムに散らばり横縦に位置し合う世界。バラバラ感があってしかるべきが、安っぽくも開花広まりを与えくる。やけくそとは別物の、人物らの気づかない、世界が感覚的・あったとすれば、個人立ち返り時に伝わる。
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 『アデュ~』。長編処女作の事を、私が知る限り日本での最多映画鑑賞者が、昨年ロジェの全貌を知った時、嘗ての慎重居士から大胆さ増してきてて、「結局ロジェは『~フィリピーヌ』だけで、後は駄目だね」と云いきったので、「それは逆だろうけど」と答えたが、もう長編に関してはこの作家は20年位観てなかったので、確かめたくなってきてた。
 確かに映画の辺境に追いやられてくも、それを無化するような綱渡り出たとこ勝負に見え作を作ってきたロジェも、当初はTV局や映画界中心部に近い所にいたのか、追いやられ感がない。メディアや世界に通じる波から歓迎され、抵抗も大して抱く暇ない、構えない作らない至福感が、流れ促しきってる。作者も現代の隅位置に居ざるを得ないも、それを永続的とは考えない、主人公らの、何かに立ち上がることはない、受け身が受け身となってない、生の流れ、その思わぬ無二の瞬間継続に沿い続けてく。
 対象に加工を加えぬ俯瞰め退きめ、その90゜や180゜変の切替えもありの中継的で中身を掬い上げるスイッチングめの定番形に甘んじられる、当時の公私の既成システムに乗っかり得る、脱力素直姿勢。様々種の番組つくり、家庭他食事、客船乗り降り・見送りや、自在踊り集まる観光の人々、らの図がそのまま置き得る安心感と定型のり確度が存在する。
 そこにケーブル捌きや、他のビルに云われた物を取りに出入りの動き追いとカメラ位置ズラし、調整室からの図・動くカメラのモニター部像、ディレクターのカメラ各々へ一斉指示怒号キレ、らの勝手知ったる息づきが坪々で嵌め込まれる、突出と一体。AD4人で勝った車の自在方向性へのフィットから、キャンプ形式野宿の設営やり取りや、浜辺に蜂発生アタフタ具合変容、らのカッティングの確かさ迄、類似感。おおらかな視界移動からフォロー迄、あくまで自然に動き出し、敢えての広大感つくりはない。二人の女の子たちの、変なゲームへの張り切りや、思う相手絡み不機嫌も、他愛なく和みと柔らぎに溶け入る。ドラマ盛り上げにこの手が欠かせずキャラも、ロケ都合のように消えてく。長めFOが入ったり、殆ど気づかれぬカッティングの撮影都合発生も不自然感よりも、現実纏まり体へのフィット感。何より、全編、ポピュラー親しみからカンツォーネ歌い上げまで、隙間なく淀みなく嵌められ鼓動してく。
 すべては自分に与えられた現実の、それに浸り従っての、内なる充実のかたち以上で、ドラマの方を切り取り、外し、連ねてゆく。周りの現実を信じきる決意と自信で、創作など捨ててゆく。時に、主体的にそうして当たり前となった空間に投げ込みをする。親友同士二人の娘の町歩き延々横フォロー、感覚的なジャンプカットが、定サイズの不自然さの自然な徹底と被る音楽で不思議な感覚的浮遊移行感に。或いはヴァカンス中、沢山の人らが猥雑まんまに踊る中での娘の一人の官能を超えた人間主体屹立のくねりに内的に呼応の前後移動の一体自然の、浮きだち屹立もす官能。この二つのイメージは、創作の苦しみも悦びも離した本作の、現実への信頼の決意が自然イメージと作者操作の両方を知らず持ち上げ得たものだ。ラストの他用人混みと巨大建造物の一部としての別れ・手振りも、ポイント無き反創作の実質巨大プロジェクトへの、気付かない名残惜しさ、貴重さ感得の、反射的行為に見える。
 20代前半、望みの道に進めたも、家族理解薄く、アルジェ絡み兵役直前で、先見えず、職場仲間と共同で車買って遊んでるような、TV局ADが偶々局内に入れてやったCMタレント等してる18歳コンビと自然親しくなるが、ポーズはともかく、各々で張り合う、真剣味はまるでなく、互いを知り合い製作者らに紹介しあったりしてる。監督と喧嘩、社をやめて、早めヴァカンスに伊コルシカ島にきた主人公を追い、そこでの大きい仕事先居るへ会わさんと二人が追ってくる。その目的で浜より奥地へ探しに入ってくも、以前ギャラ未払いの主に会い、別の仕事にかからんとするも、すべて会えぬか消えられる。しかし、三人は嫉妬も萎み溶ける忌憚ない飾りない仲に。が、召集通知早めに来て、出発便やっと間に合っての、別れに。
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