ピュンピュン丸

羅生門のピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.7
黒澤監督。タイトルは『羅生門』とあるが、芥川龍之介の短編『羅生門』と『藪の中』を映画用に脚色した内容。

ある日、薪を取りに山に入った杣売り(志村喬)はそこで1人の武士の死体を発見する。びっくりした杣売りはすぐに検非違使に届け出るが、取り調べに連れて来られた人々の証言は何故かそれぞれ食い違うのだ。そこで、検非違使では巫女を呼び、死んだ武士の霊を呼び起こして真実を語らせた…。

冒頭、ただ杣売りの志村喬が藪の中を進むだけの光景で、高鳴る音楽とともに緊張が盛り上がっていき、物語にグッと引き込まれた。

多襄丸を演じる三船敏郎の演技が見事。他の作品特に『隠し砦の三悪人』の六郎太と比較すると、そのギャップが凄い。品性のかけらも無いが、それだけに感情に素直に表情が変化するキャラクターで、女の行動に一喜一憂、特に怯えた表情が上手い。予想外だった。

しかし、一番の見どころは、多襄丸に慰み者にされた美しい夫人(京マチ子)の地の底からこみ上げてくるような不敵な笑い。「女」って怖い、と感じてしまった。

人の数だけ『真実』がある。
それとも真実は「藪の中」ということか。

豪雨に叩きつけられる羅生門の軒下と、太陽のギラギラ照りつける藪の中が、見事なコントラスト。光の使い方が上手い。

赤ん坊が救い…なんだかんだあっても、結局は性善説に立って生きるしかないのだろうか。