よしかつ

羅生門のよしかつのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.6
〜今日という今日は、人の心が信じられなくなりそうだ。これは、盗賊よりも、恨みよりも、飢饉や火事や戦よりも、恐ろしい。〜

〜わたしは恥ずかしいことを言ってしまったようだ〜

山の茂みのなかで殺された身なりのよい男。男の殺害にあたって、証言の食い違う三人(①盗賊、②殺された男の妻、③殺された男自身)。珍しい点は、自分の潔白を主張するのではなく、それぞれ「自分が殺した」と主張するところ。
たまたまそれを見かけた木こりによる「第四の証言」で真実が明らかになる。

以下、感想。
・白黒映画にも関わらず、不快な「暑さ」の描写がすごくうまいと感じた。タジョウマルの汗だくの顔や木漏れ日など。
・人の命や自分の罪状より、自分のプライドやメンツを優先する「滑稽さ」を表現していると感じた。
・ラストの赤子を巡るシーンでは、人の有する知識で他人のふるまいのみえ方が変わってしまうことがうまく表現されている。
それ故にぞんざいに扱われても、相手に対して好意的に振舞うことで、人同士の関係は改善するという希望を見出した。
・そして、人間のことを信じられなくなった男二人と赤子の対比が見事。
よしかつ

よしかつ