レインウォッチャー

SING/シング:ネクストステージのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

4.0
前作からスケールUP!良い要素は引き継ぎつつ新しい挑戦を果たす、誠実な続編。
「名曲わんこそば」感覚は変わらずちゃんとお腹いっぱいで帰ることができるし、冒頭とラストに配置された二つの劇中劇(もはやシルクドソレイユみたいな壮大さに成長)が盛り上げる。

一作目で解決済み課題の焼き直しでもなく、既存キャラの雑な改変もない。そして、新たな課題を与えて答えを出す。玉石混交の続編界隈で、この安心感は貴重だ。

今回の課題は、アイデンティティの揺らぎ。
前作が志望校に合格するまでとすれば今回は入学後の話で、新たな目標や他者との関わりに直面する。前回は内側に閉じていたのに対し、彼らが今回戦うのは外部とのコンフリクトなのだ。
仲良しごっこだけでは開けない、外の権威や評価、より優れた存在との出会いと葛藤・協調。それらの成果がちゃんとラストステージの各パフォーマンスに結実していてカタルシスにつながる。

そんな彼らの成長を補うように、色彩が豊かで楽しい映画でもある。
ステージ上におけるハイパーポップに氾濫する演出だけでなく、細部に配置されたパレットが目に嬉しい。ラブのピンク、不安の青、警告の赤などなど。

新キャラもまた外からの新しい風を象徴する役割を果たしつつ、それぞれ魅力的だった。
特に、ヴィラン役オオカミ社長の娘であるポーシャ。チームに不均衡をもたらし搔き回す存在の割に、後半の身代わりの早さ・しがらみのなさとかやたらあっさりしているようにも思えたけれど、実際Z世代ってあんな感じかも?という納得感があったりもした。

ムーンは相変わらずトニースターク並の迷惑サイコおじさんだが(解決法がほぼ精神論だし)、物語上どうしても発生するご都合的な歪みだったり、ヘイトを他のキャラの代わりに引き受けていると言う意味で座長・プロデューサーの役割をまっとうにこなしている気もしてきた。
その点では、その名前(ムーン=月)も、周囲の輝きを受けて初めて光る存在、としてぴったりだ。

三作目があるとしたら、次は彼が「他の誰かのために」輝ける存在になる話だろうか。今回、アッシュやロジータが垣間見せた他者へのケア・寄り添いが、ヒントになるかもしれない。

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笑いどころとしてとりあえずミス・クロウリーを定期的にぶちこんでおくスタイル、ずるいと思いつつ毎回まんまと笑ってしまったから文句が言えない。System Of A Downは反則やて…。

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今回はまず吹替版鑑賞。

B’z稲葉さんにしてもアイナ・ジ・エンドにしても、台詞の演技は決して上手くはないわけだけれど、ひとたび歌い出せば一瞬で「持って行く」姿にぐうの音も出ない。

U2ボノのキャラクターを稲葉さんが、ときいたとき、ボノと声質も違うのでどうなんだろう…と思ったのもまったく的外れな杞憂。変にイチブを寄せるでもなく、彼にしかできない歌でゼンブねじ伏せるUltra Soulを見せてくれた(欲を言えば、もっと聴きたかったのはあるかな)

洋楽→日本語への変換・抽出における、蔦屋好位置、いしわたり淳治の「押さえるところを押さえた」ワークも光っている。関ジャムで語られるの待機。