まうす

劇場版 嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~/リチャード二世のまうすのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

ウィショーさんため息ものの美しさ……
(なんだこの理解に苦しむ王は…)で始まるんだけど、譲位のシーン以降、そこまでに感じてたことが180度ひっくり返ってしまった。
譲位して映画終わるのかな?と思ったんだけど、むしろここからが本番。
終わってから暫くは立ち上がりたくもなかった。

【~譲位】
決闘を(やむを得ず)認めたと思いきや、ノーフォーク公もボリングブルックも追放処分。ボリングブルックにtwice five timeの夏(その後のfather's father's sonといいなぜそんなややこしい言い方を…)の追放と言って早々に6年に短縮。
単なる気分屋なのか…?
血筋と権威を重視し、気に入らない者は消し、庶民にも貴族にも嫌われ、なんというか傲慢でワガママで激情的。
かなり子供っぽくて、恐ろしいほどコロコロ感情が変わる。(でもウィショーさん好きすぎてそこもかわいいんだなあ)
そして、不思議なことに子供っぽいのに覚悟を決めた時の風格はあったりする。

一時追放したとはいえ、正当な王族で叔父と従兄弟の資産も地位も奪う絶望的な倫理観。
ボリングブルック(後のヘンリー四世)とはかなり対極的。
ボリングブルックのそれは確かに謀反だし、後々薔薇戦争が起こるのもまあ分かるんだけど(それを予言するような発言があるのが好き)、リチャード二世のやり方が酷すぎて、権利の回復を求めるランカスター家の肩を持たざるを得ない。
無条件で正当な権利を復活させるなら争う気は無かったわけだし。

【譲位~】
でも譲位するんだよね。譲位せざるを得ないと覚悟した時の不安定さ…ヘンリー四世がそれを望んでいなかったとしても、あの勢いに勝てないと覚悟したんだろうな。
譲位で呼び出されるシーンは超屈辱的。自分で決めたのはその通りだけどこれは可哀想。
譲るの?譲らないの?みたいな子供っぽく狂気じみた行動、と思いきや井戸の比喩、でも地面に突っ伏して王冠を床に転がす…何かわからないけど掻き乱されて、いつの間にか心掴まれてる。(ウィショーさんハマり役すぎるし)
こことロンドン塔での大演説(?)が個人的に結構鳥肌モノ。グサグサ刺さる。
王ではなくなった自分は一体どうなるのか、何者なのか。

譲位のシーンでは「なんだこいつ」みたいな目で見ていたヘンリー四世も、実際に自分に謀反を企てられて、それ以降何かが変わってる。リチャード二世の回想シーンとかまさにそれ。
次々に首が運ばれてくるの、王冠の重圧を感じる。

リチャード二世も遺体となって運ばれてくるわけですが、助けてほしかったオーマールにトドメを刺されるのしんどいな……
そのオーマールはヘンリー四世に'' They love not poison that do poison need. ''と言われるし。
もうこの辺で私のメンタルは限界←

終わりのシーン、はじめと同じなのに、あの時の神々しさはまったく無くて、暗くて冷たい雰囲気になってるの色々と来るものがある。
ウィショーさんの見た目もあるかもしれないけど、譲位以降のシーンはところどころでイエス・キリストを思わせるな、と感じていたから、最後の最後で磔刑のキリスト像が映されたの、頭殴られた気分だった。
あああしんどい。


ところでイングランドってあんなに綺麗な海あるのかな?
砂浜のRichard IIを消す波、好きな演出だった。
まうす

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